第4章 雪解け始まる微かな気配
私を非難するようにそう言ってきた天元さんに
「…行きませんよ!行くわけがないじゃないですか!」
と大声で言ってしまう。
「はぁ?なんでだよ。煉獄のやつに誘われただろう?」
「…っ誘われましたよ!天元さんにそうしろって言われたって!」
私がそう言うと、天元さんは更に顔を顰め
「あの馬鹿正直が…余計な事言いやがって…」
私から視線を逸らしながらぼそりと言った。その様子に無性に腹が立ち
「鈴音、少し落ち着いて」
雛鶴さんが心配げにそう声を掛けてくれたにも関わらず
「どうしてわざわざそんなことを炎柱様に頼む必要があるんです?天元さんが…私の為にってしてくれたことだっていうのは、なんとなく…わかります!でも何で…どうしてよりによって炎柱様なんです!?私が一番苦手としている相手だって…ご存じですよね?余計な事…しないでください!」
私は天元さんを責めるようにそう言ってしまった。そんな私の様子に
「ちょいと鈴音。いくらあんたでも、天元様に向かってその口の利き方はないんじゃないのかい?」
天元さんの左腕に収まっていたまきをさんが、私を軽く睨みつけながらそう言った。
「…っ…だって…」
まきおさんにそんな目で見られるのは、ここに来てから初めての出来事で、私は途端に悲しくなり、そんな子どもじみた事しか言えなくなってしまう。
「だってじゃないよ。天元様はねぇ「まきを」…はい」
言葉を続けようとしたまきをさんを、天元さんはその名を呼ぶことで遮り、
「荒山。お前ちょっと俺に着いてこい」
天元さんはまきをさんと雛鶴さんの頭をそれぞれひと撫ですると(後から来た須磨さんが私の隣で”ずるいです!私にもしてください!と全く空気を読まない主張をしている)、立ち上がり、私に自分の後を追ってくるように言った。
「…はい」
私は先ほどまでの興奮が嘘のように、静かにそう返事をすると、天元さんの後をとぼとぼと追った。