第4章 雪解け始まる微かな気配
「ただいま戻りましたぁ」
音柱邸に到着し、私が正面玄関で草履を脱ぎ、それを揃えていると、バタバタとくノ一らしからぬ足音を立て
「鈴音ちゃんお帰りなさぁい!」
ご機嫌な様子の須磨さんがお出迎えに出てきてくれた。
須磨さんは私の姿を視界に入れるや否や
「きゃー!鈴音ちゃんとってもかわいいです!似合っています!最高です!」
子どものようにぴょんぴょん飛び跳ね、はしゃぎながらそう言ってくれた。
「ありがとうございます。でも…獣道を歩いたから少し汚れてしまって…」
私が肩を落としながらそう言うと、
「心配ありません!そんなの雛鶴さんの手にかかればちょちょいのちょいですから!」
須磨さんはどこか誇らしげにそう言った。
「…ふふ…”雛鶴さんが”ってところが、なんとも須磨さんらしいですね」
私がそう言って笑うと
「はい!私がやったら余計に汚してしまいそうなので!こういうお仕事は雛鶴さんに任せるに限ります」
須磨さんもにっこりとその顔に笑みを浮かべた。
「それにしても、戻ってくるのが思ったよりも早いすね…炎柱様と食事には行かなかったんですか?」
須磨さんにそう尋ねられ
…そうだ。天元さん…ひとこと言わないと気が済まない!
頼んでもないお節介を焼かれたことを思い出し、怒りの感情が沸々と湧き上がってきた。
屋敷の音を聴き、天元さんの気配を探ると、居間に雛鶴さん、まきをさんと一緒にいるようだった。
「…行ってません。行くはずがありません!」
そう言いながら
「ちょ…鈴音ちゃん!どうしたんですか!?」
ドシドシと音を立て、急ぎ足で居間へと向かう私を須磨さんは慌てた様子で追いかけてくる。
目的地である居間に到着し、中の様子を見ると、雛鶴さんとまきをさんをそれぞれ左右の手で抱いた天元さんと目が合う。
「お前。帰ってくんのが早すぎんだろ。煉獄とちゃんと飯食ってきたのか?」
私と目が合った天元さんは眉をひそめながらそう問うてきた。