第4章 雪解け始まる微かな気配
そんなことを考えていると
「あ!やっぱり、さっきの黒いお洋服を着たお姉ちゃんだ!」
女の子はそう言いながらその顔に、花のようにかわいらしい笑顔を浮かべた。
「ふふっ。そうだよ。ここのお団子があんまりにも美味しかったから、また来ちゃった」
私がそう言うと
「そうなの!父様と母様が作るお団子は世界で一番美味しいの!毎日何本食べても飽きないの!」
無邪気な笑顔でそう言う女の子は、ひどくかわいらしく、その幸せな様子に勝手に虚しさを感じていた自分が恥ずかしくなってしまうほどだった。
「そうだね。だから私もね、私を家族みたいにかわいがってくれる人たちに、この美味しいお団子をどうしても食べてもらいたくて。今、あなたのお母さんにお土産用のお団子を準備してもらってるの」
「わぁ!えっと…ごひいきに?…してもらって…だっけな?…ありがとうございます!」
拙いその言い方は相変わらずかわいらしく、私の頬はすっかりと緩み切ってしまっていた。
ふと女の子は、何かを思い出したかのように目を丸く見開いた後、狭い店内をきょろきょろと見回し始める。
…急にどうしたのかな?
そんな事を思いながらその様子を見守っていると、女の子は目的のものが店内にはないと判断したのか、布巾をその小さくかわいらしい手に持ったまま、お店の外へと駆け足で出て行ってしまった。
一人で外に出て行ってしまったことに不安を覚えた私は、座っていた椅子から立ち上がり、その子の後を追って店の外に出る。
暖簾をくぐり店の外に出ると、女の子は先ほど店内を見回していた時と同じように、辺りをきょろきょろと見回していた。
驚かせないようにとゆっくりとその子に近づき
「どうかしたの?」
後ろから、なるべく優しい声色で声を掛ける。私の問いかけに肩をピクリとほんの少し動かし、女の子が私の方にくるりと振り向いた。