第4章 雪解け始まる微かな気配
けれどもパッ私と目が合うと、ほんの少し首を傾げた。
その様子に思わず私も同じように首を傾げてしまう。
「あ!あなた!恰好が変わっていたからわからなかったけど、さっきも来てくれた方ですよね?」
その言葉に、私は思わず自分の首から下を確認するように見る。
そういえば待ち合わせの時は隊服着てたっけ。
そんなことを考えながら
「はい。凄くおいしかったので、また来ちゃいました」
私がそう答えると
「ありがとうございます!お団子、何を何本包みますか?」
「えぇっと…一人2本ずつは欲しいから…全種類6本ずついただけますか?」
私がそう答えると
「まぁそんなに!最近はこの辺物騒で…客足が遠のいていたので助かります!今準備するので、よかったらそこに座って待っていてくださいな」
そう言って店員さんは、店内にある椅子に座るよう私に勧めてくれた。私は薦められた通りに椅子に座り、お団子が来るのを待つことにした。
そうしながらぼんやりと店内を見回していると、お店の奥から、先ほど”お店の看板娘になるの”と言っていたかわいらしい女の子が布巾を持って現れた。
女の子は私が椅子に座っていることに気が付くと一瞬驚いた素振りを見せ、その後、私の顔を首を傾げ、不思議そうな顔をしながらじっと見つめてきた。
その仕草や表情は、先ほどお店の裏に入っていったその子のお母さんとそっくりで、
…きっとお母さんに愛されているんだろうな
その子が自分の幼少期と違って幸せであることが嬉しい気持ちと、自分には決して得ることが出来なかった”母の愛”というものを見せつけられたような、そんな気がしてしまい、少し虚しくもなった。