第4章 雪解け始まる微かな気配
一瞬そんな考えが私の頭に浮かんだ。
けれども
…だめだめ!違うから!おかしいから!ちょっといいところを見せられたからって…なにそんなこと考えちゃっるわけ?違う。違う!きっと調子を崩されすぎたせいだ。そうよ。そうに決まってる!
そんなことを考えながら、無言で炎柱様の顔をじっと見ていると、
「任務も無事終える事が出来た。俺も君も、着物を着ている。せっかくのいい機会だ!これから食事にでも行こう!」
「…食…事…?」
炎柱様は、私と視線の高さを合わせ、にっこりと微笑みながらそう言った。
え…?私…今…炎柱様に誘われて…る…?なんで?どうして?…どういうつもり何のつもり?
頭の中が疑問符で埋め尽くされ、あまりにも予想外の展開に私が固まってしまっていると
「場所は俺に任せてくれ!とても美味い天ぷら屋を知っている!」
炎柱様はまるで私が炎柱様と食事に行くことを了承したかのように話を勝手に進めていく。
…っだめだめ!このままじゃ全部勝手に決められちゃう!
「…っ私、行くだなんて一言も言っていません!」
慌てて私がそう言うと、
「そうだったろうか?だがまだこんなにも日が高い!宇髄から、君を誘うようにと言われている!そして俺ももっと君と…荒山と話がしたい!だから行こう!」
満面の笑みでそう言ってくる炎柱様に反し、
天元さん…どうして余計なことを…
頼んでもいないのに余計なことをされ、私の眉間に深い皺が刻まれる。
ムクムクと反発するような気持ちが心の奥底から湧きあがり
「行きません」
ひどく冷たい声色でそう言ってしまった。そんな私に炎柱様は
「君は俺のことを苦手と感じているようだが、理由はなんだろうか?」
「…っ!」
先程と同じ声色で、まるでそんなの何でもないことのようにそう尋ねてきた。態度には出さないようにしているつもりだったが、やはり流石の柱というべきか(よくよく振り返ると後半は態度に出てしまっている場面が多かったかもしれない)、私の苦手意識は、すっかり炎柱様にお見通しだったようだ。
こうなってしまった今、嘘をついてもきっと簡単に見透かされてしまうに違いない。