第4章 雪解け始まる微かな気配
私は再び炎柱の背中へと腕を伸ばし、
花畑の真ん中。土の中。
と、再び指で背中に文字を書いた。炎柱様は、今度は視線だけを私に寄越す。
「…あのお花。とっても…綺麗…」
"あの子はまるで蝶々が花に誘われるかのようにフラフラと引き寄せられていったんだ!あの素敵な!ピンク色の大きな花に!羨ましい!僕も、僕もあのお花に食べてもらいたかったぁ!'"
気がふれた男性がみな口を揃えてそう言っていたという報告に倣い、私も、フラフラとその音と気配の出どころに近づいて行き、近づきながらこっそりと右手に爆玉を一つずつ隠し持った。
サクッサクッ
と音を立て近づいていき、その場所まであともう少しというところまで来たそのとき、
ガサガサガサガサッ
「…っ!」
4本の長い蔦が地面から現れ、私の身体を捉えようとビュンッと向かって来た。
…出た!
蔦は真っ直ぐと、私の四肢に伸びてくる。そして、それが私の身体に届き、巻きつこうとしたその時、
ゴウッ
と音を立て炎柱様が私の横を凄まじい速さで飛ぶように駆け抜け、蔦の出どころである箇所に思いっきり日輪刀を突き刺した。
ぎゃぁぁぁぁぁあ!
…うるさっ。
耳栓をしていても聴こえてしまう、汚らしい叫び声に私を顰める。それから、蔦が本体と思われる方に戻っていくのを目視で確認し、炎柱様が身を翻しと本体と距離が離れたのを確認すると、その場で上方向に跳躍し
ヒュンッ
と右手に持っていた爆玉を本体に向かって投げつけた。爆玉は真っ直ぐと本体に向かっていき
ドゴォォォン
激しく爆発する。
ぎゃぁぁぁぁぁあ!
再び聴こえてきた叫び声に耳栓の上から耳を塞いでいると、パッとこちらにやってきた炎柱様が
「よもや荒山も忍びだったとは!流石宇髄の継子!」
耳栓をしている私に聴こえるように、いつもよりも更にでかい声でそう言った。