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音の溢れる世界でいつか【煉獄さん】【鬼滅の刃】

第4章 雪解け始まる微かな気配


"こちらの様子を伺っている可能性がある鬼の目を確実に欺くため"


そう言われてしまえば、


"嫌です"


と言えるはずもなく、更には自分でも何か変化があったときに腕を組んでいれば言葉なしにすぐに伝えられるとそう思い至ってしまった私は、嫌だなと思う気持ちに蓋をして、まるでお互いを恋慕い合うもの同士のように、腕を組んで獣道を進んでいた。


落ち着かない。


そう思いながらも私は、ざわつく心を懸命に抑え、周辺の気配を探り続けていた。













その時は、突然やって来た。


…っ何この音?明らかに…おかしい…!


ブワッと背筋に嫌な感じが流れ、私は咄嗟に炎柱様の腕にしがみつく力を強めてしまう。

そんな私の様子に気がついた炎柱様が、前を見据えていた視線を私によこした。私はその視線に、コクリと頷き、さりげなく右腕を炎柱様の腕から離し、その広い背中へと腕を伸ばした。そして、


音。注意。もうすぐ。


と、指で背中に文字を書いた。炎柱様は大げさに頷きながら


「疲れてしまったか?もうすぐなはずだ!頑張ろう!」


そう言って、私の言わんとすることが伝わったことを示してくれた。

あまり長く音を聴いているのは良くないと判断した私は、


「楽しみです!急ぎましょう!」


と返事をし、歩みを速めながら炎柱様の腕を引っ張た。










そうして歩いていると


…っ…確かに…驚くほどに綺麗な景色…だけど…嫌な音と、気配が…ビンビンする。…聴いているのが…辛い…思考が…持っていかれそう。


桃色の花が咲き乱れる綺麗な花畑が眼前に現れた。


耳栓がなかったら、恐らくこの催眠作用があると思われる音に飲み込まれ、正気を保っていられなかったかも知れない。


そう思う程の神経を刺激する音が、私を苦しめた。けれどもそれだけ激しい音を発している出どころを、私が見逃すはずがない。炎柱様の顔を見上げると、炎柱様は特に何も感じないのか、もしくは感じない振りをしているのか、その表情に変化は見られない。けれども、私が炎柱様の腕にしがみつく強さ、そして表情の変化に気がついたのか、その視線はしっかりと花畑ではなく私に向けられていた。


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