第4章 雪解け始まる微かな気配
「そうか。では俺から説明させてもらおう。実はすでにこの任務には、一般隊士の中でも階級の高い男女に何度か就いてもらったことがある。初めは男の隊士だけで任務に就き、次に男女2人組で任務に就いた。その任務で、鬼の姿を一瞬だけ捉えたが、逃げられてしまったとのことだ。そして、それ以降被害者は増えて行く一方で、鬼の気配すら捉えられなくなったときく。だから今回、俺たちは一般人を装う必要があり、尚且つ優れた探査能力を有する荒山に任務にを担ってもらう必要があったと言うわけだ」
「…そういうことですか」
だからわざわざこんな動きにくい格好で任務に当たるのかとようやく納得がいった。
「鬼の頸は必ず俺が打ち取る!だから君は鬼を探し出し、状況を把握することに集中してほしい」
そう真剣な表情で話す炎柱様は、私が苦手とする”声が大きくて体格のいい男性”というよりも、”鬼殺隊の柱”という印象のほうが圧倒的に強く、安心感のようなものすら覚えた。そして
「約束しよう!何があろうと、君のことは必ずや俺が守る!」
「…っ!」
炎柱様の口から放たれたその言葉に、私は衝撃を受けた。
何それ?何なの?地位も、強さも、容姿も、全部全部人よりも優れているものを持っているのに…どうしてそんなにも自分よりも下の人間に優しいの?
ぐっと両手を強く握り締め、そう思っている気持ちが表情に出てしまうのだけは何とか堪えた。けれどもその代わり、何も言えず、ただじっと炎柱様の顔を見つめているような形にになってしまい、ただじっと私に見られているだけの状態の炎柱様は
「どうかしたか?」
私にそう尋ねてくる。
「…なんでも…ありません」
私は、得意の愛想笑いに近い笑顔を顔に貼り付け、そうボソリと答えることしか出来なかった。
炎柱様は、探るような表情で私をじっと見返してきたが
「そうか!では話を続けよう!」
と滞ってしまった空気を変えるようにそう言った。
「…お願いします」