第4章 雪解け始まる微かな気配
そんな事を考えていると、
「お待たせしました」
先程の可愛らしい子どもが、今度は炎柱様が頼んだ分のお団子とお茶をお盆に乗せてやって来た。
「ここに置いてもらえるだろうか?」
炎柱様は、自身の座っている隣をポンポンと叩く。
「かしこまり、ました!」
その辿々しい言い方がたまらなく可愛くて、思わず笑ってしまいそうになった。けれども、こちらが"一生懸命さが微笑ましい"という思いで笑っていても、それがこの子を傷つけてしまうかも、と思い懸命に堪えた。コトリと、お団子がのったお皿と、お茶の入った湯呑みが置かれたのを確認した炎柱様は
「父上母上の手伝いか?」
ニコニコと優しげな笑みを浮かべながら女の子にそう尋ねた。すると女の子は
「はい!私、一生懸命お手伝いして、このお店の、看板娘ってやつになるの!」
と、満面の笑みで答えた。
「素晴らしい心がけだ!これからもその気持ちを大切に頑張り続けるといい!」
炎柱様はそう言うと、その大きな手で女の子の頭をポンポンと撫でた。
「お兄さんありがとう!ゆっくり、していってください!」
そう言って女の子はペコリとお辞儀をすると、店内へと戻って行った。
一連のそのやり取りを見ていた私は、
炎柱様…小さい子の扱いがとっても上手。弟さんがいるって言ってたし、そのせいかな?見た目が強烈だし、怖がられたっておかしくないのに…。
そんなことをぼんやりと考えていると
「美味い!」
「…ひッ!」
突如隣から聞こえてきた大声に、あまりに驚いた私の口から、思わず声が漏れてしまう。
「美味い!……美味い!」
団子をひとつ飲み込むたびに叫ぶ炎柱様に、先程までの感動に近い気持ちは、何処か遠くへと飛んで行ってしまった。
……やっぱり苦手だ。
そう思いながら、私も最後のお団子をパクリと頬張った。
団子を食べ終え、甘味屋を出た炎柱様と私は、今回の任務地へと向かった。