第4章 雪解け始まる微かな気配
…いつの間に!…また私は…悪い癖を…!
普段しっかりしようと振舞っている私は、こうしてたまにボロを出してしまうことがある。とりわけそれらは、好物が目の前にあるときや、自分の心に突き刺さる程に好きな音を見つけたときに顔を出す。
お団子が乗っているお皿の隣に置いてあったお抹茶を急いで飲み、お団子を無理やり奥へと流し込んだ。
お抹茶を飲み、ようやく落ち着きを取り戻した私に、
「驚かせてすまなかった!まさかそこまで驚かれてしまうとは、予想していなかった!」
炎柱様がそう言った。
相変わらずの無駄に大きな声に、思わず眉間に皺が寄りそうになる。
「…いいえ。ぼんやりとしていた私が悪いので。炎柱さまが謝る必要はございません」
そう口に出しながらも
謝るくらいならもっと声を抑えてよね。
私は心の中で毒づきながら炎柱様様にニコリと微笑みかけた。けれども、そんな私の心が透けて見えてしまったのだろうか。炎柱様が、ほんのりと首を傾げ、不思議そうな顔をしながら私の顔を覗き込んで来た。
「…先程はあんなにもニコニコ笑っていたのに、何故そんなに不自然な顔で笑っているんだ?」
炎柱様はそう言いながら、更に私に顔を近づけて来た。
「…なんのことでしょうか?」
…っ近い近い!近いんだってばぁ!その壊れた人との距離感、なんとかしてよねぇ!
さり気無く炎柱様が近づいて来た分距離を取ろうとするも、決して広いとはいえない長椅子では取れる距離なんてものはたかが知れていた。
そんな私の様子なんて一切気にする様子もなく、炎柱様は
「あの可愛らしい子に向かって微笑んでいただろう!ああ言った表情の方が君には似合う!」
そう言ってにっこりと笑みを浮かべた。
…一体この人は、いつから私のことを見ていたんだろう?
聞きたい気もするが、聞いたところで何か変わるわけでもないので、まぁ良いやと半ば投げやりになりながら自らを納得させる。