第4章 雪解け始まる微かな気配
のんびりと景色を眺めながら注文したお団子とお抹茶が来るのを待っていると、ふと私の頭に炎柱様と会った際に言われた言葉や出来事が頭に蘇って来た。
炎柱様…なんとなく、嫌な人じゃないんだなって言うことは、この間お饅頭を買ったあの日にわかった。でも、初対面から距離感は異常に近いし、人の二の腕すごい触ってきたし…嫌な人ではないけどやっぱり人よりずれてる感じがするんだよね。それでいてあの大声でしょ?あとそう。あの眼力。猛禽類みたいな。なんかこっちの心の奥底まで見透かしてきそうなあの眼が…ちょっと怖いんだよね。そんな相手と恋人同士を演じなきゃいけないかぁ。ちゃんと出来るのかなぁ。
はぁぁぁ
私の口から、大きな大きな溜息が漏れ出た。
その時、
「お…お待たせしました」
このお店の娘と思われる小さくて可愛らしい女の子が、お盆に乗せたお団子とお抹茶を私の隣に置いた。
「ごゆっくり、どうぞ」
緊張している様子がとても可愛らしく、
「ありがとう。お手伝い?偉いね」
そう言って私が微笑みかけると、その女の子は照れたようにモジモジしながらお辞儀をして駆け足で店の中へと戻って行ってしまった。
「ふふっ。かわいい」
お皿に乗せられたお団子をひとつとり、3つ並んだ丸いお団子の1番上をパクリと頬張る。パァっと口内に広がる甘い餡子の味に
「うぅん!美味しい!」
独り言を述べ、目をつぶり、その美味しいお団子の味を堪能していた。
美味しいお団子に、私は炎柱様との待ち合わせのことなんてすっかり忘れ去ってしまっていた。
「すみません!俺にも彼女と同じものを!」
「…っ!…ゴホッ…ゴホッ」
突如隣から聞こえた大声に、私の身体はびくりと大袈裟なほどに跳び上がり、驚きで咀嚼していたお団子を一気に飲み込んでしまい激しく咽せてしまう。
「大丈夫か?茶を飲むといい」
咳をしながら隣を見ると、いつの間にそこにいたのか炎柱様が私の背中をその大きな手でさすり、心配気に私の顔を覗き込んでいるではないか。