第1章 始まりの雷鳴
それから更に数ヶ月経ったある日。
昼の稽古を終え、桑島さんに頼まれた買い出しから帰ってきた私は善逸の頭を見て驚愕した。
「…黄色く…なった…?」
初めは、自分の目がおかしくなったんだと思い、何度も瞬きを繰り返したり、目をゴシゴシと擦ってみたりもした。けれどもやはり、何度それを試しても、善逸の頭は黄色いままだ。、
「…善逸なんか…頭おかしくない?」
「いや姉ちゃん、言い方おかしいから。その言い方誤解を生むから」
「あ、ごめん」
どんなに頑張っても、善逸の髪の毛が突然黄色くなった答えに辿り着けない私は、自分が買い出しに行っている間に、善逸に何があったのか、本人に話を聞くことにした。
「え?じゃあなに?桑島さんから逃げて木に登って雷に打たれたの?え?何で生きてるの?それで頭が黄色くなるの?」
矢継ぎ早にそう問う私に、
「俺だって、なんで生きてるのかも、頭がこんなになったのかもよく分からないんだよぉ」
善逸はガックリと肩を落としながらそう答えた。
「…まぁでも、私は素敵だと思うよ。その黄色い頭。優しい善逸の雰囲気によく合ってると思う」
私が善逸の頭を撫でながら(髪がチリチリになっていないことにも驚いた)そう言うと
「うん。俺、一生この頭でいる」
さっきまでの落ち込みようが嘘のように元気になった。
「…ふふっ」
相変わらず単純な子。
そんな善逸の様子に、笑いながら心の中でそう呟いた。
「それで、桑島さんは何処?」
「…じいちゃんなら、獪岳と山に行ってる。なんでもまた、新しい型を教えるんだって…」
善逸はそう言いながら、再び悲しそうに肩を落とした。
獪岳は私が思っていた通り、私より、そして善逸よりも雷の呼吸をものにするのが上手かった。
悔しいけど…仕方ない。
「…じゃあさ、善逸。まだお夕飯の準備をするのには時間が早いし、桃でも食べながら私と少し話をしない?」
私がそう善逸に笑いかけると、
「するする!行こう!」
「それじゃあ決まり。あ、買ってきたもの先にしまっちゃうから、少し待ってて」
「俺も手伝う!そうすれば早く行けるし!」
「ふふっ。そうだね」
再び元気を取り戻した善逸と私は、2人一緒に荷物を片付け、それを終えると桃の木が立ち並ぶ庭へと出た。