第4章 雪解け始まる微かな気配
えっと、待ち合わせの場所は…
「…山の麓の甘味屋か。…っあ!確かここには絶品の餡子が沢山のったお団子があった筈!よし!私、早めに行ってお団子を食べる事にします!自分のご機嫌を取るのも、大事な任務の一つですからね!」
甘味屋が待ち合わせ場所と知り、途端に機嫌が良くなる私を
「お前…本当に餡子好きだな。あんまり餡子食ってばっかりいると、その内身体から餡子の匂いがするようになっちまうぞ」
天元さんが呆れたと言わんばかりの顔でそう言った。そんな天元さんの言葉に対し
「…何言ってるんです?餡子食べ過ぎで餡子の匂いがするようになるわけ、ないじゃないですか」
そう本気で返す私に、
「…餡子ののった団子より、可愛げでもつく薬でも買って飲めや」
天元さんはげんなりとしながらそう言った。
「そんなもの、あったとしても私には必要ありません!それじゃあ、私仮眠してきますので。すみませんが失礼します」
そう言いながら立ち上がった私に、天元さんは背を向け後ろ手で手を振りながら
「へいへい。寝過ごすなよ」
自分の部屋がある方へと去って行った。それを見送った私は、天元さんに言われた通り仮眠を取るため、自分の部屋がある離れへと向かった。
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仮眠を終え離れから母家に向かい、縁側で草履を脱ぎ廊下に上がる。そこから居間に向かい、スーっと居間へと繋がる襖を開けると
「あ!鈴音ちゃん!よく眠れましたか?」
須磨さんがニコニコとしながら私に近寄ってきた。
「はい。ちょっと緊張しちゃってなかなか寝付けなかったんですけど、一旦眠ってしまえばもうぐっすりでした」
須磨さんと話していると、
「はい。これ、天元様から鈴音に」
そう言って雛鶴さんが私に向け差し出してくれたのは、私がじぃちゃんからもらった羽織と似た色をした、可愛らしい着物だった。