第4章 雪解け始まる微かな気配
押し黙ってしまう私に、
「嫌だろうとそうじゃなかろうと、お前に拒否権はねぇ。腹括って、さっさと出発する準備でもしろ」
天元さんは容赦なくそう言った。
「…はい…わかりました」
本当は、わかりたくなんてないけど。
「それで、任務に就くのはいつからですか?」
私が天元さんにそう尋ねると、
「これからだ」
「へ?」
さも当然のそうにそう言われてしまい、思わず間抜けな声が出てしまった。
「これからだ。何度も言わせんな。お前の鴉から今日…いや昨日か。昨日の任務も全く滞りなく終わったって聞いてるぜ?」
和めぇ。余計なことを言っちゃうんだから。
和は、天元さんの鎹鴉である虹丸と同様に、天元さんによく懐いていた。いや、うまく手懐けられていると言った方が正しいのかもしれない。最近では、"私ももっと派手派手になりたいなぁ"なんて言っている程だ。そんなこんなで、私の行動は、和を通して天元さんに筒抜けになってしまい、勘弁して欲しいと思ってしまうこともある。それでも、あの人懐っこさを見せられてしまうと、怒れないのだから仕方ない。
「必要なもんは嫁たちに準備させておく。お前は一旦部屋に戻って仮眠しろ。時間になったら起こしてやる。ほら。これに待ち合わせの場所と時間、あとは今回の任務に関する事が書いてある」
そう言うと、天元さんは四つに折り畳まれた紙をズイッと私に押し付けてきた。
「…わかりました」
はぁ
とひとつ溜息をつきながらその紙を受け取り、カサリとそれを開いた。