第4章 雪解け始まる微かな気配
「…なんでよりによって私なんです?もっと適任な人材がいますよね?胡蝶様とか甘露寺様とか。私よりもよっぽど炎柱様と恋仲に見えるじゃないですか」
そう不満を漏らす私に
「阿保か。十二鬼月相手でもねぇのに、始めから同じ任務に柱2人も向かわせるわけがねぇだろ。第一な、ただ恋人同士に見えりゃあいいって問題じゃねぇんだよ」
今度は天元さんが眉間に皺を寄せながら言った。
「…じゃあどういう問題なんです?」
私がそう尋ねると、
「今回必要なのは、煉獄と恋仲に見える女の隊士で、尚且つ優れた探査能力がなくちゃならねぇ。…どっかの誰かさんが適任だと思わねぇか?」
そう言って天元さんは、人差し指で私を指差す。
「……」
女性隊士という条件だけであれば、男性に比べれば少ないものの沢山いる。けれども、自分で言ってしまうのは些か恥ずかしい部分はあるものの、私は、自分以上に探査能力があると思った女性にこれまで会ったことがない。
「んな不満な顔してんじゃねぇよ。お館様から直々の使命だぜ?派手に光栄に思えってんだ」
その言葉に、
「それは…自分のことを認めていただけるのは嬉しいです…でも…」
そう思う気持ちも確かにあった。けれどもそれと同じ位、いやそれ以上にその特別任務に対して不安な気持ちの方が大きかった。
「どうせ煉獄とってのが嫌なんだろう?」
「…っ!」
図星をつかれ黙ってしまう私に、天元さんは
はぁ
と大きなため息をひとつ吐いた。
ツツピーツツピー
と、空気を読めるはずもないシジュウカラのかわいい鳴き声が、中庭に響く。
呆れられちゃったかな…
相変わらずな自分が情けなく思え、私は天元さんの顔をまともに見る事が出来ずにいた。ただわかって欲しいのは、私がこんなにも今回の特別任務に何色を示しているのは、何も炎柱様が、私が苦手とする体格が良くて声が大きい男性だからと言う理由だけではない。
あの時の、あの心の奥底が揺り動くような…あれが…また来てしまうのが……怖い。