第4章 雪解け始まる微かな気配
湯浴みくらい…一人で出来ないのかな?
そんな風に思う一方で、
本当に仲良しだな
とじゃれ合う3人を見ながらそう思っていた。すると、パチリと天元さんと目が合い
「荒山。お前に"特別任務"がある」
天元さんがそう言った。脈略なく発せられたその言葉に、
「…え?特別任務…ってなんですか?」
そしてやけに意味深なその言い方に、なにやらとてつもなく嫌な予感がした私がそう尋ねるも
「湯浴みが終わったら話す。隊服…着替えんじゃねぇぞ?」
そう言うと天元さんは、"早く行きましょう"と言うまきをさんと須磨さんに腕を引かれ、湯殿へと消えていった。
いやいや!そんな意味深な言葉残して湯浴みなんて行かないでよ!ていうか、湯浴みが終わった後で言ってくれればそれでよかったじゃない!
クナイを拭いていた手はすっかりと止まってしまい
「…気になるんですけどぉ」
とポツリと呟いた私に
「天元様ってば、本当に鈴音を揶揄うのが好きね。子どもみたいで本当に困っちゃうわね」
そう言っている雛鶴さんの顔は”困っちゃうわね”と言いつつも、”天元様ったら可愛い”とその顔に書いてある。はっきり言って、天元さんのことをちっとも可愛いと思えない私は、なんとも言えない気持ちで天元さんを恋慕う気持ちを惜しみなく醸し出すその顔を見ていた。そして、手入れがまだ途中のクナイを一旦鞄にしまい、
縁側に行こう。
外の音でも聴いて気持ちを落ち着かせようと思い、鞄を持って場所を移動した。
いつものあの子…なんて鳥だっけな…あの子の声がする。あ、そうだ。シジュウカラ。良かった。最近来ないからどうしたのかと思ってたんだよね。
鳥の鳴き声が好きな私は、よくここで餌を撒いて鳥を呼び寄せていた(天元さんに物凄く呆れられたが、そんなことは気にしない)。餌撒きを続けていると、餌がなくても私のことを覚えてくれているのか、頻繁に野鳥が遊びにきてくれるようになった。
そうして目を瞑り鳥の鳴き声を堪能しているいる私の方に、天元さんの足音が近づいてくる。