第4章 雪解け始まる微かな気配
そのミソッカス発言が気になったのは、まきをさんも同じだったようで
「あんたねぇ。鈴音をあんたと同じにすんじゃないわよ」
「え?どうしてですか?」
「ナオの実力は天元様も認めてんの!あんたとは違うの!この馬鹿須磨ぁ!」
「馬鹿ぁ!?今まきをさん私のこと馬鹿って言いましたねぇ!」
今にも喧嘩を始めそうな2人の様子に私が慌てて
「そんな!私がミソッカスだろうとそうじゃなかろうとどっちでも良いので!喧嘩はやめて下さい!ね?ね?」
私がまきをさんと須磨さんを宥めるようにそう言っていると、
「なんだだお前ら。また喧嘩してやがるのか?」
「「天元様!」」
いつの間に、そこにいたのか見回りから戻ってきた天元さんの姿がそこにあった。
「天元様、お帰りなさい」
手拭で手を拭きながら雛鶴さんもやってくると、
「おう!お前ら、戻ったぞ」
天元さんは雛鶴さん、まきをさん、須磨さんにニコリと笑みを向ける。
いつも。いっつも…帰って来るたびにこれか。
まるで長い間離れ離れだったかのように、お互いを愛おしげに見つめ、再会を喜び合う。
うん。わかるよ。鬼殺隊である以上…ましてや天元さんは柱だし、生きて再会できることは当たり前のことじゃない。こうして生きて帰ってこられることは、とても幸せなことだよ。…でもね?
「これから湯殿に行くんですよね?この間は雛鶴さんだったんですから、今日は私に!私に背中を流させてください!」
「はぁ!?今日はあたしが天元様の背中を流すって決めてんの!あんたは我慢しなさいよ!」
「嫌です嫌です!私だって天元様のお背中流したいんですぅ!」
「ダメに決まってるでしょ!」
天元さんが見回りや任務から戻り湯浴みをするとなると、毎回誰かしらそれについて行くのだ。その事に、最初は目が飛び出すんじゃないかと思うほど驚いたが、今となってはそんなのは些細なことで、この家では普通のことだと思えるようになってしまった。
そんな二人の口喧嘩に終止符を打ったのは、
「仕方ねぇなぁ…どっちも譲れねぇって言うんなら、お前ら二人相手にしてやるよ」
天元さんの、何やら誤解を生んでしまいそうなその言葉だった。