第4章 雪解け始まる微かな気配
身を清め、新しい隊服に袖を通し居間に戻ると、
「鈴音ちゃんおかえりなさい!」
「おかえり鈴音」
須磨さんと、まきをさんの姿もそこにあった。
「ただいま戻りました」
そう言って、二人が座っている座卓に私も一緒に座り、持っていていたカバンからクナイを取り出した。
「うん。上手く手入れできてるね」
「ふふっ。皆さんが丁寧に教えてくれたからです」
そう言いながら手入れ用の特殊な布をカバンから取り出し、
キュッキュッ
汚れがついてしまっているクナイを綺麗に拭いていく。
「そんな姿を見ていると…やっぱり隊士って言うよりもくノ一ですね!」
須磨さんがとても楽しげにそう言った。
「確かにねぇ。で、任務の方はどうだったんだい?」
まきをさんの質問に対し、私は手入れの手を止めることなく
「はい、なんの滞りもなく、無事に済みました」
ん…ここの汚れが…落ち難いなぁ
そんな事を考えながら
キュッキュッキュッキュッ
と半ばやけになったようにクナイを拭き続ける。
「で、あんたの響の呼吸の方はどうなんだい?」
その質問に対し、
「えぇっと…前にまきをさんたちに見せた時よりは使いこなせるようになったと思います。実戦でもちょこちょこ使うようにしてて、そのお陰もあるんですかねぇ…最近は任務も上手く行ってて、また階級が上がりそうだって和が喜んでいました。私としては、誰かの助けになれれば階級なんてどうでもいいんですけど」
相変わらず手を止める事なく私はそう答えた。
「鈴音ちゃんののんびり鴉ちゃんですね!事あるごとに天元様の鴉の周りをぴょこぴょこしてて本当に可愛いです!それにしても、また階級が上がるんですか!?鈴音ちゃん、私と同じくらいミソッカスなのによく頑張ってます!偉いです!」
その"ミソッカス"と言う言葉に
え?私、須磨さんと同じミソッカスなの?そんなの初耳なんだけど?ていうかそもそもミソッカスって何?
思わずクナイを手入れしていた手が止まった。