第4章 雪解け始まる微かな気配
「その色々が気になるんじゃねぇかよ。ま、お前にはお前の事情があるから。深くは聞かないでおいてやるよ」
そんなことをいう苗場さんに
「…苗場さん、やっぱりいい人ですね」
私が思ったことをそのまま口に出すと
「…なんだよ突然。俺なんか褒めたって何にも出てきやしないからな」
と何故か疑うような視線を向けられてしまう。
「そんなつもり…ありませんよ」
”第一印象は最悪でした”と言えるはずもなく、曖昧な返事を返した。
「まぁ良いけどよ。ところで知ってるか?隠の中で荒山、すげぇ話題の人物だぜ?」
そう言いながら、ニヤリと私の顔を見遣る苗場さんに
「…話題?どうしてですか?」
と質問を返す。
苗場さんは私のその問いに何故か誇らしげな様子で
「”音柱の継子が参加してる隊は、重傷者も出ないし、後処理が物凄く少ない。一体どんな仕掛けがあるのか”ってな!」
そう言いながら、報告書らしきものを封筒にしまい、ニヤリと再度私の顔を見た。
「そうなんですか?」
そんなの聞いたことないけど。
そう思いながら、首をほんの少し傾げ苗場さんにそう尋ねると、
「俺もな、今日まで半信半疑ではあったが…この通り、隠になってから最短で業務を終えた。驚きだな」
「…それは…よかったです…ね?」
なんと答えるべきかわからず、曖昧な返事しか出来なかった。
「俺たちが来る時には大体もう鬼の頸を切った後だからよくわからないがよ、荒山の隊にいた隊士は口を揃えて”指示が早くて驚く程的確だ。流石音柱の継子だ”って言ってるらしいぜ。お前凄いよ」
そう苗場さんに言われ
「…ありがとう…ございます…」
自分の努力が認められたような気がして、とても嬉しく、くすぐったいような気持ちになった。
苗場さんは私の方に近づいて来ると、ポンと私の頭に手を置き
「荒山は、小せえ身体でよく頑張ってる。俺も、お前を見習って頑張るよ」
そう言うと
「ほれ。あとは俺らに任せて、さっさと荒山も帰りな。他の隊士たちは、もう先に帰してあるんだろう?」
そう声を掛けてくれた。その苗場さんの好意に甘え、
「…はい。それでは、よろしくお願いします」
頭を下げ
「おう。じゃあな」
その場を後にした。