第3章 未知との出会い、騒音との再会
あんな派手な化粧しないで、普通の顔の方が一般的には格好いいのに…なんであえてあんな化粧してるんだろう。
そんなことを考えながら天元さんをじっと見ていると、
「あ!ダメですダメです!食べさせてあげませんって言いましたよね!」
雛鶴さんまきをさん須磨さんと仲良く座っている座卓まで徐に近づいてきた天元さんが、ヒョイっとお饅頭をひとつ手に取りその口に放った。
もぐもぐと咀嚼した後、お饅頭を飲み込んだ天元さんは
「はぁ!?お前あれ本気で言ってたのか?」
呆れた表情で私の方をチラリと見遣る。
「本気も本気です!天元さん、明らかに私が困っているの見て楽しんでいましたよね!?私が炎柱様のこと苦手って、天元さんなら容易に気がついたはずですよね!?なのにどうして…どうして……あんな風に言うんですか?」
私が困っている姿を見るのが、そんなにも楽しかったのだろうか?
そう考えると、腹立たしさもあったが、同じくらい悲しくもあった。
苦手と思う相手を前に、慌てふためく私を見て…何が楽しいの…?
そんな風に思いながら天元さんを睨んでいると
「そんな顔すんなって!別にお前で遊んでたわけじゃねえし!…ほら!お前がそんな顔しやがるせいで、こいつらまで俺のことそんな目で見てんじゃねぇかよ!」
「…え?」
天元さんの言葉に雛鶴さん、まきをさん、須磨さんの顔を見遣ると、
子どもを諭すような優しくけれどもほんの少し厳しさを含んだ目をする雛鶴さん。
いつもより眉を吊り上げ、じっと天元さんを見るまきをさん。
"だめですよ天元様!鈴音ちゃんを虐めないでください!"と口に出し、バシバシと座卓を叩く須磨さん。
…やだやだ嬉しい!
普段天元さんに対してとても従順な3人が(もちろん天元さんは3人のことをこれでもか!と言うほど愛しているので、3人に何かを無理強いする姿なんて見たことはないが)、私のために怒ってくれている。その事実がたまらなく嬉しかった。
そんな様子に天元さんは
「違えって!ただ楽しんでただけじゃねえから!お前らも、こいつがこのままじゃ良くねぇって言ってただろう?」
と慌てた様子で、座卓を囲んでいる私たちと視線を合わせるようにその場にしゃがんだ。