第3章 未知との出会い、騒音との再会
不思議な感覚に戸惑い、返事もせず、じっと炎柱様を見つめるだけの私に、
「どうかしかしたか?」
と炎柱様が小首を傾げる。
「…っいいえ!なんでもありません!…あの…それでは、失礼します」
「あぁ!宇髄と共にいればなんの心配はないと思うが、気をつけて帰るように!」
「…はい」
何故炎柱様ほどの人が、たいしてして親しくもない私にそんなことをわざわざ言ってくれるのか、私には理解できない。
「おい。置いて行くぞ」
天元さんの言葉に慌てて振り向くと、いつの間にか天元さんは歩き出しており
「…っ待ってください天元さん!」
慌てて身体の向きを変え、天元さんの後を追った。
「また会おう!」
急いでいた私は、そう声を掛けてくれた炎柱様の方に振り返ることはできなかった。
いいや。なんとなく、振り返るのが怖くて出来なかったのかもしれない。
——————————————
音柱邸に到着し、身を清めた私は、休息もそこそこに、お土産に買ってきたお饅頭と、雛鶴さんがいれてくれたお茶に舌鼓を打ちながら、今回の出来事の愚痴を雛鶴さんまきをさん須磨さんの3人に溢していた。
「酷くないですか!?私が…私が明らかに戸惑ってるのに、最終的にお腹抱えて笑ってたんですよ!?」
怒りに任せ、お饅頭を一口で口に入れモグモグと咀嚼する。
…うんやっぱり美味しい。荒んだ心が癒されるようだわ。
「ほら、一口で食べないの。喉に詰まったら大変でしょ?」
「あんたが炎柱様苦手なの、まぁ想像つくからね」
「炎柱様、すごくいい人ですけど、なんかちょっとズレたところありますからね!」
「…炎柱様もきっと、あんたにだけは言われたくないね」
「あぁー!須磨さんはどうしてそんな意地悪ばっかり言うんですぅ!?天元様!天元様ぁ!」
「須磨ぁ!あんたねぇ!いちいち天元様に言いつけようとすんじゃないよ!」
そんな騒がしさにつられてやってきたのか
「なんだぁ?お前らまた喧嘩してんのか?」
私と同じく、身を清め、着流姿に変わった天元さんがやってきた。