第3章 未知との出会い、騒音との再会
お饅頭も手に入ったし、もうこれ以上天元さんに遊ばれるのは嫌!
そう思った私が、
「天元さん。私、早くこの出来立ての美味しいお饅頭を雛鶴さんとまきをさんと須磨さんに食べさせてあげたいんです。だからもう帰りましょう?帰りがいつもより遅くなってしまうと、何かあったのかと心配されてしまいますよ?」
天元さんにそう声を掛けると
「それはいけない!妻を…ましてやお前は3人も妻がいるのだろう?早く帰ってその無事な姿を見せてやるべきだ!俺などに構っていないで早く帰ったほうがいい!」
意外にも私の言葉に反応を示したのは、天元さんではなく炎柱様だった。
そして、その言葉の内容も、雛鶴さんまきをさん須磨さんを気遣う内容で、
この人、こんな面もあるんだ。…さっきも…弟さんとの約束を優先していたし…。
そんな風に、実際の炎柱様と私が勝手に作り出した炎柱様像の差に、戸惑いに近いものを感じていた。
「いやそもそも、饅頭買いてぇって寄り道したのお前だろ!…ま、弟との約束があるんなら仕方ねぇな!じゃ、俺らはもう帰るわ!千寿郎によろしくな!」
「うむ!伝えておく!」
あぁ。やっとこの居心地の悪い空間からいなくなれる。
そう思い、ほっとしている私に
「荒山!」
「…っ!?」
炎柱様が再び声をかけてくる。まさかまた話しかけられると思っていなかった私は、驚き、肩だけでなく全身がビクリと大きく波打つ。
…っ返事。上官に、返事くらいきちんとしないと。
「…っはい。なんでしょうか?」
私の返事に、炎柱様は私の目をじーっと真っ直ぐ覗き込み
ニコリ
とまるで太陽のように明るく、暖かみのある笑みを浮かべ
「君とじっくり話ができるのを楽しみにしている!」
そう言った。
今まで見たことのない、そして誰からも向けられたことのないようなその笑顔に、
「…っ…」
胸の奥が
ゆらり
と、ゆり動くような、そんな不思議な感覚を味わった。
…これは…なに?…こんなの…初めて…。