Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第5章 ★はないちもんめ:角名
それから、ぱらぱらとまばらに部員が集まり出し、角名くんは俺もストレッチするからと銀くんの方へと行った。私もドリンクの用意や今後の予定のプリント作成なんかがあるので、気持ちを切り替えてボトルの入ったカゴを抱える。
ジャアアアア、と蛇口を2つ使って、効率よくボトルに水道水を入れていく。まだ暑い日も続くから、しばらくはスポドリの粉末入りで良さそうだ。監督からも、そういう指示が出てるし。
『えぇと、1リットルで1袋だと多くて...半分...』
前に北さんからがぶ飲みする奴らがおるから少なめに粉を入れて欲しいと頼まれてから、規定の半分で作っている。その方が糖質やカロリーの摂りすぎの予防にも繋がるらしい。話を聞いた時は、なるほどと思ったものだ。
「せいが出るな」
『おつかれ、侑くん』
そんな声を掛けてくれたのは、双子の金髪、侑くんの方。部室に荷物を置いて、ロードワークをしてから来ているという侑くんは、部活前にも限らず既に汗をかいていた。
水道の蛇口をひねり、勢いよく飛び出す水を、がふがふと飲み込んでいく。ついでに両腕も濡らすと、これめっちゃ気持ちえぇと笑う。
「なぁ、陽菜乃ちゃん」
『ん?』
「サムからも聞いてんけど、
ほんまに大丈夫なんか、角名のこと」
いつになく真剣な表情の侑くん。ボトルに水を注いでいた蛇口を閉め、正面から向かい合う。
『治くんにも言ったけど、私は平気よ』
「ンなこと言うても、角名の彼女てしんどいやろ」
めっちゃ束縛強いから俺らと喋ってても何か言われそうやし、デリカシーたまにどっかに置いてきとるし、目ぇほっそいし、体幹キモいし、アイツのブロック俺嫌いやもん。
指折り数えながら挙げていく内容には、もはや私が関係ないものもあったり、しまいにはただの悪口だったり。ただ、侑くんが本気で心配してくれているのだけは、伝わった。
『ありがとう、今は困ってる事ないよ』
「なんかあったらいつでも言うてや」
俺もサムも陽菜乃ちゃんのこと気に入っとんねん、そう言って笑い飛ばすと、侑くんは何かに気付いたようにハッとした顔になり、それから少しだけ頬を染めると、そそくさと体育館へと戻って行った。
なんだったんだろう。