Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第5章 ★はないちもんめ:角名
その後の部活はつつがなく進み、休憩を挟みながら13時には終了となった。体育館自体は15時まで使えるので、残りたい人は残るように、ただしオーバーワークしないようにと監督からの伝達。
当たり前のようにほとんどの部員が残り、今日の練習を反芻したり、新しいことを練習している。かくいう私も居残りで、今後の予定表を三つ折りにしては部員それぞれの封筒に入れていく、というなんとも地味な作業をしている。
『みんな見てると、私もバレーしたくなるんよなぁ』
そう、ぽつりと呟くと、どこからともなく角名くんが現れて、陽菜乃はダメだよと指でばってんを作る。するとそこにボールを持った双子が混ざる。
「俺らも陽菜乃ちゃんとバレーしたいわぁ」
「せやなぁツム」
『いやいや、侑くんと治くんには敵わんて』
「ンなこと言うても、
見学初日に俺のサーブ拾ったやん」
『あれこそまぐれじゃん』
えぇいいじゃん今度昼休みバレー解放の時やろうやと食い下がる侑くん。珍しく治くんも乗り気で、明日の昼休みなら行けるんとちゃうかと尋ねてくる。
じゃあ明日なら、と答えると、その先を遮るように角名くんの手が後ろから伸びてくる。何かと思って振り向けば、そのまま腕の中に閉じ込められた。
「ダメです、明日の昼休みもその先も、
ずーっと俺と一緒にお昼食べるもんね?」
『でもお昼食べ終わったら暇じゃん』
「こいつらとバレーする方が良いんだ」
ふぅん、と呟く角名くんの声は、絶対零度より冷たくて。目の前の双子の顔が凍りつくのが見える。
ヤバい角名がガチギレしとる、アカン陽菜乃ちゃんの命のぅなってしまうかもしらん、いや半殺しにして部屋で飼うんやろ、なんて物騒なことをひそひそ話す双子に、角名くんはお前ら聞こえてるからなと釘を刺す。
『分かった、じゃあ倫太郎もやろう?』
「ええけど、このアホども2人の頭に
たくさんボール当たっちゃうかもなぁ」
「それは嫌や!」
「陽菜乃ちゃん助けて!」
ついコントみたいで面白くてプフッと吹き出せば、角名くんもこいつらには呆れたみたいな顔で笑った。
それから、私にしか聞こえない小さな声で、陽菜乃の腰が平気やったらな、と呟く。きゅっと細くなった目が、私を見下ろしていた。