Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第5章 ★はないちもんめ:角名
ところで、稲荷崎の寮は男女でフロアが分かれている構造になっている。1~3階は男子寮、4~5階は女子寮で、エレベーターか階段で行けるけど、女子に配布されてるカードがないと入れない。
一応、防犯やら寮で男女のあれこれが起きるのを予防するためらしいが、子供っていうのはなんやかんや抜け道を作る生き物。前にカードを失くしたと嘘をついた女の子がいて、その子のカードを使って出入りしてる先輩もおった、らしい。
角名くんならそういう事して入ってきそうだな、なんて思いながら部屋に入ると、先に角名くんが荷解きを始めてくれていた。
『ありがとう角名くん』
「陽菜乃?」
『う、あ、り、倫太郎』
「そうよな、名前で呼ばんとな」
まだ癖で苗字で呼んでしまうこともあって、そういう時角名くんはものすごく冷たい目をする。けど、ちゃんと倫太郎って呼べば、いつもみたいに目をきゅって細めて、お利口さんだねって頭を撫でてくれる。
今もそう、倫太郎って何回か呼べば、少しご機嫌になって、隙さえあればちゅっちゅとキスをしてくる。
「この箱、服入ってんのか、開けるね」
『えっ、あ、それダメ…!』
最後までとっておいたダンボールは、制止も虚しく角名くんの手で開けられる。中身は服、だけど問題入れ方。
「これ…」
『っ、だから言ったのに、ばか』
部活のジャージや、私服、そしてその一番上にすぐしまうからと下着類を入れていたのだ。黒いキャミソールの上には、カラフルなブラとショーツがご丁寧に鎮座している。
しばしの沈黙、それから角名くんはおもむろに手を伸ばすと、黒のブラとショーツを手に取って、それをスンと嗅ぐ。
『はぁ!?ちょ、何やっとんやめてや!』
思わず手から取り上げようと、飛び掛るようにして角名くんに突っ込む。と、そのままどたんと後ろに角名くんは倒れて尻餅をつき、ブレーキが効かず私はその上に乗ってしまう。
取れるもんなら取ってみな、とでも言うように角名くんはヒラヒラと下着を頭上に掲げる。手を伸ばして頑張ってみるが、簡単に返してくれる訳もなく。
『ねぇお願い、それ返して、倫太郎』
「それ、じゃあ分からんなぁ」
意地悪く笑う倫太郎。こういう時は、私が恥ずかしがるのを分かっていて、言わせようとしてくる。