Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第5章 ★はないちもんめ:角名
次の日の朝練。様子を見に来た監督に親の転勤があることと、寮に入ろうと思っていることを伝えると、それがいいと頷いてくれた。それから、監督の方からも担任や教頭に一言添えてくれるとのことで、ますます安心した。
そして、そんな安心は束の間で。
「陽菜乃」
『角名くん、どしたん?』
「あれ、今日は名前で呼んでくれないんや」
朝練終わり、荷物をまとめていた私の所へ来ると、角名くんはそんな事を言ってぎゅっと抱き締める。ざわ、と部員とギャラリーの女子が騒ぎ経つ。
『ちょ、ここ体育館、みんな見てるってば!』
「陽菜乃が“角名くん”て言うのが悪い、
昨日はあんなに可愛い声で名前呼んでたのに」
「「角名!?」」
拗ねたような角名くんに、真っ先に反応したのは双子。わなわなと震えながら、角名くんの肩にそれぞれが手を置いて私から角名くんを引っ張って剥がし、距離をとる。
「角名、まさか、陽菜乃ちゃんと…!?」
「さぁ、どうだろうね陽菜乃」
『え、な、何が』
「エッチしたんとちゃうんかお前ら!」
『し、してな、ちょ、侑くんやめてよ!』
般若が見たらビックリするであろう形相の侑くんに、頼むから憶測でものを言うんじゃないと一喝。それから角名くんにも、紛らわしい言い方をしないで欲しいとお願いする。
「じゃあ言い方ってものがあるやんな、陽菜乃?」
『うぅ………っり、倫太郎、
これからは紛らわしい言い方しないで…?』
「分かった、言わない
エッチしたらちゃんとしたって言おうね」
「「それはちゃう!!」」
もはや悲鳴に近い双子の叫びに、お前ら喧しいと北さんから絶対零度の一言。そうだ、北さんにも転勤と寮に入ること言わないと。そう思い、駆け寄ってその肩を叩き、昨日の出来事を話す。
「無理だけはせんようにな、あと、
うちに残るって決めてくれて、ありがとうな」
『いえ、こちらこそ…
初めて、居場所ができた気がするんです』
だからありがとうございます、と頭を下げれば、ぽんぽんと頭に乗る手のひら。顔を上げると、北さんがいつも助かってるよと微笑んでいた。
そして、そのやり取りを、角名くんは何も言わずにじっと見詰めていたのを、後で治くんから聞くことになる。