Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第5章 ★はないちもんめ:角名
門限ギリギリまで公園で話を聞いてくれた角名くんは、ご丁寧に家まで送ってくれた。そして、こんな格好ですみませんと両親に謝罪を入れた上に、バレー部にとって、自分にとって私がどれだけ大きい存在かを両親に熱弁した。
「だから、陽菜乃さんは稲荷崎に通えるように、
なんとか入寮の手配をしてもらえないですか」
お願いします、と直角になって頭を下げる角名くんは、試合の時も先生に謝る時にも見たことがなくて、こんなに必死になってくれることに涙が出そうで。
両親は、陽菜乃の事を心から大事にしてくれるお友達ができて嬉しいと目を潤ませ、是非そうしたいと頷いてくれた。きっと、私だけじゃ説得できなかった。
『本当にありがとう、角名くん』
マンションのエントランス、蛍光灯の下で角名くんにハグをする。陽菜乃がどこにも行かなくてよかったと、そっと撫でられる頭。私よりうんと高い所にある顔は、見なくても分かる、きっとすごく優しい顔だ。
『ね、今度お礼させて欲しいんだけど』
「なんでも?」
『うん、私に出来ることなら』
少し考えたようにウーンと唸ってから、角名くんはそろそろ名前で呼んで欲しいと要望を口にする。
『えっと、倫太郎くん』
「俺だって呼び捨てなんだから、
陽菜乃も“倫太郎”って呼んでくれん?」
『り、りんたろぅ……』
なんだかくすぐったくて、若干尻すぼみになったのを角名くんは見逃してくれない。そろり、と胸に寄せていた顔を上げれば、ちゃあんと名前呼んで好きって言ってくれんと分かんないんだけど、と悪戯っぽく笑う。
あぁ、こういう所もたまらなく好き。
『り、倫太郎、だいすき…』
「まぁ、陽菜乃にしては合格かな」
頑張りました、とおでこに降ってくるキス。じっと見つめれば、どこに欲しいか言ってくれないと分からん、と真顔で返される。
こういう時、倫太郎は何を考えているんだろう、とふと思うことがある。獲物に狙いを定めたみたいな、でもその瞳には吸い込まれそうになる引力があって。
きっと私は、これまでもこれからも逆らえない。
『ここに、キスして欲しい』
「誰に?」
『りん、たろ………っ』
自分の唇に倫太郎の手を導いて、名前を呼べば、応えるように甘いキスをくれた。