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Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》

第5章 ★はないちもんめ:角名



「陽菜乃、っ!」


お風呂上がりなのか、いつも重力に逆らっている髪は、ぺちょりと大人しくなっている。部活の時のような半袖短パン、急いでくれたようで整わない息すら、嬉しく思ってしまう。


『ごめんね、急に来て』


「いや、俺はいいけど…
 陽菜乃、なんかヤなことあった?」


こくり。


「………まさか、引越し?」


少しの沈黙。肯定したくない。頷いてしまえば、自分から角名くんを諦めると言ってしまうみたいで。もうここにはいられない、そう認めてしまうようで、嫌だった。


何も言えずに、ただ立ちすくむ私を、角名くんが抱き締める。その瞬間、じんわりと目元が熱くなるのを感じた。


『……っ、やだ…すなく、やだよぉ………』


「泣かないでよ、まだ決まったわけじゃない」


『で、も…ッ親は、一人暮らし、
 ダメ、って、いう、から…っうぅ…』


「ほんなら、陽菜乃も寮に入ろうよ」


そんな手があったとは。ぽろぽろ零れていた涙は、角名くんの言葉に急に引っ込む。あれ、考えてみたらそうじゃん。


稲荷崎の寮は部活の特待生や、遠方から通う生徒に適応される。その理論で行けば、親の勤務地が県外になる私も入寮することが出来るはずだ。


『角名くん、天才かもしれんな』


ずび、とすすりながら笑えば、鼻の頭に落ちてくる角名くんの唇。それから、いつもみたいに目をきゅって細めて笑う。


「これで陽菜乃と離れなくて済むな、
 休み中でも先生はいるから、明日言いに行き」


『うん、そうする』


ありがとう、と今度は自分から角名くんに抱き着く。始まりはあんな感じだったけど、今ではすっかり普通のカレカノみたいになってる。勿論クラスでも公認になったし、角名くんは宣言通り部活中でも暇な時間には構いに来る。


そして、禁止だったらどうしようと不安だった部内恋愛だが、意外にも、部活に支障がなければ良いと前向きな言葉をくれたのは、北さんだったなぁ。


角名くんの匂いを肺いっぱいに吸い込めば、幸せな気持ちが満たされていく。好きな人とこうしてくっつけるなんて、本当に至福の時間だ。


 
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