Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第1章 ★Vê você:日向
入ってすぐ、フロントで身分証を預けるのはブラジル特有だと思う。あたふたとしながら部屋が映っているモニターを操作する翔陽が、どこか可愛く見えてしまう。結局、お風呂がついてて空いてる部屋の中でいちばん安かった108号室を選んだ。
ルームキーを受け取り、部屋に向かって歩き出すと、そっと翔陽が手を繋いできた。ちらりと横目でうかがい、ぎゅっと握り返すと、耳が少し赤くなっているのが見えた。大胆な提案をしてきた割に、意外とウブなのだろうか。
ドアノブにキーを差し込み、ガチャリと開ける。部屋のど真ん中に大きなベッドがひとつ、それからソファやテレビなんかも置いてある。一際目を引いたのは、バスルーム、なんとガラス張りでベッドの置いてある部屋から丸見えである。
それに気付いたのか、翔陽がヒェッと小さく声を漏らした。
『お風呂すごいね、全部見えるよこれ』
ほら、と言ってバスルームから翔陽にヒラヒラと手を振ると、ぎこちなく手を振り返してくる。トイレも同じ空間にあって、なるほどこれは少し恥ずかしいかもしれない。
『どしたの?酔い覚めた?』
「イヤッ、全然、そんなことは、」
ナインダケド。と、歯切れが悪い。もじもじとしている翔陽、自分のよりも少し高い位置にある形のいい耳に、そっと口を近付ける。
『もうベッド行く?
それともシャワーする?』
「べっ、!
シャ、シャワーしてきます!シャス!」
どたばたと慌ただしくガラスの向こうへと走る翔陽。お湯の音を確認してから、私はベッドに腰掛けた。少しだけ、酔いが覚めて来た気がする。けれど、この部屋を出ていこうとは思わない。
烏の行水かと問いたくなる程の速度で、3分クッキングならぬ3分シャワーを済ませた翔陽。腰にタオルを巻いて急いで出てきたのだろう、しなびたオレンジの頭からはぽたぽたと水滴が垂れている。
『もう、髪の毛濡れてるじゃん!
拭かないと湯冷めするからダメでしょ〜』
備え付けのフェイスタオルでわしわしと荒く拭く。時折り手櫛でとかしてやると、毛質は細くて柔らか、手入れの行き届いた猫のようでしばらく頭を撫でてしまう。