Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第1章 ★Vê você:日向
「えっと、ここ、おれんち」
学生向け、と言った感じのこじんまりとしたアパート。もっと話したかったね、話し足りないね、と笑うと、おれも、と。それから、少し周りをきょろきょろしてから、そっと耳打ちされる。
「おれ、あそこ行ってみたい」
『どこ?』
俯きがちに言われ、目線の方を向く。もう少し坂を上った先、チカチカと光る看板。そこには【Motel】の文字。Motelと言えば一般的なホテルを示すが、ブラジルではちょっと意味が変わるらしい。
日本で言う、ラブホテル的な。
前に同居人から聞いたその話に、ぼぼぼっと頭が火を吹く。だって、今日あったばっかりだし。あとほらお酒入っちゃってるから。そういえば彼女とかいないのかな、私はいないけど、彼氏。モーテルに誘うってそういうことだよね。最後にしたのいつだっけ。どうしよう最近全然自己処理とかしてない。ご飯美味しすぎて太ったし。
でも、だって、とか。そんな言葉が次々浮かんで消えて。
『いみ、わかって言ってる?』
「わかってる。分かってて、誘ってる」
右手を伸ばし、ぎゅ、と、翔陽の左手を掴む。暑さのせいか、緊張か、やや汗ばんだその手は、思っていたよりずっとオトコノコの手だった。
握り返してくるその圧力から、加減してくれているのが伝わる。それから、不安と、焦りと、ほんの少しの期待。
『行っても、いい、よ…』
「だよね、無理だよね………って、え?」
ぐわっと効果音がしそうなほど、食い気味にマジデ?と聞かれる。
『2回は、言わないから』
あとこれお酒入ってるからだから、自分に言い聞かせるように早口で付け加える。そっかそうだよね、今度こそ落ち込んだように翔陽が言う。違う、そうじゃなくて。
『ちゃんと、惹かれてる。しょーよーに』
鮮やかなオレンジの双眸を見つめる。あなたと同じ、この思いが伝わりますように、と。翔陽の瞳孔がキュッと開き、まるで吸い込まれそうな錯覚を覚える。あぁ、私、
この、目に、抱かれるんだ。
繋いだ手から伝わる熱は、異国の風を忘れさせるほどに熱く、これから先の情事をどうしようもなく予感させていた。