Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第5章 ★はないちもんめ:角名
「角名...お前手ェ早すぎんか...」
「あぁ、治、おったん」
『だから言ったしょ、人来てるよって...』
そこにいたのは双子の片割れ、髪が銀色の治くんの方。呆れたような顔をして、角名くんの頭をぺしっと叩く。
「もしかして、陽菜乃ちゃん誘ったんも
好きな子目の届くとこに置きたかったからか?」
「ご名答」
『え、何それ聞いてないけど』
「陽菜乃ちゃん、こいつはやめとけ、
本気になられたらガチでくっそ重いで」
「俺もう本気なんだけど」
朝からやめろや暑苦しい、と、ゲンナリする治くんと、やっぱり飄々としている角名くんは、なんだか真反対に見えて面白かった。好きになったもんはしゃあないから、と言う角名くんは、出会って2日なのに既に執着の欠片すら見受けられる。
付き合ったとしてもすぐ遠距離になって、向こうの気持ちが離れて連絡が来なくなる。それがお決まりの私にとっては、むしろ角名くんぐらい重くないと続かないかもしれない。
『もしまた転校して遠くに行っても、
角名くんから別れないなら構わないよ』
「分かった、じゃあ付き合お」
「軽ゥ、ええんか陽菜乃ちゃん、
銀とか、まだこいつよりツムのがマシやで」
『ありがとう治くん、
でも私、角名くんがいいから』
「アァ、ソウ......」
もう手に負えません、そんな顔をしている治くん。お前らホームルームすっぽかしたんやからはよ教室来いよ、と言い残した治くんは階段を降りていった。
改めて隣に座る角名くんを見ると、ものすごく満足そうな顔をしている。目が合って、優しく笑うから、つられて私も笑って。とりあえずもう一限始まるから急いで教室に戻ることになった。
『そう言えば忘れてたけど、
男バレって部内恋愛禁止とか無いん?』
「知らん、女マネあんまおらんかったし」
『そう、まぁ部活の邪魔には
ならないようにしないとだよね』
「俺は暇さえあれば構いに行くけど」
ちゃんと練習してねと言えば、それはもちろんと返ってきたから、その辺は割り切ってるんだろうな、角名くん。
そうして、転校入部2日目にして彼氏ができた。今思えば、この時にやめておくべきだったのかもしれない。けど、そんなことを思ったところで、後の祭りだった。