Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第5章 ★はないちもんめ:角名
端正な顔だなぁと、ぼんやり思う。背も高くて、顔もカッコよくて、性格はちょっとわからんけど。そんな、バレンタインに何個もチョコを貰ってそうな男の子が、どうして私を。
『んっ、ぅ...』
ぷにゅ、と角名くんの唇が押し当てられる柔らかな衝撃に、鼻にかかった声が無意識に上がる。今度こそ、目を閉じれば、何度も角度を変えて触れる、唇の感触。
角名くん、男の子なのに、すっごく柔らかい唇してる。リップクリームとか塗ってるのかな、なんてぼんやりと考えた。
満足したのか、角名くんは唇を離す。頬に手を添えると、ついさっきまで自分のが触れていた私の唇をそっと親指でなぞる。
「片倉さん、なんで嫌がらんの」
もしかしてビッチ、なんて失礼なことも言われて、少しだけむっとする。けど、角名くんの言ってたさっきの一言が引っ掛かってるから、それだけ、確認したくて。
『あの、さっき言ってた、
気になってる子、って、私のこと...?』
「それ以外におらんと思うけど」
『そっ、か...うん、ありがと』
ありがとってなんやねん、とツッコまれたが、ありがとうはありがとうだ。私の事、少しでも気になってくれて、ありがとう。バレー部に誘ってくれて、ありがとう。学校のこと部活のこと教えてくれて、ありがとう。
たくさんあるでしょ、と指折り数えれば、角名くんは不思議そうな顔をして、それから笑った。
「アンタ、おもろい子やな」
『変な感覚してるねって言われる』
「そこがいいんやろ」
そう言うと、角名くんはもう一度唇を重ねようと顔を近づけてくる。拒む理由も今度こそ無くなったな、と思って、目を閉じる。と、誰かが階段を登ってくる気配。
慌てて角名くんの肩を押すが、誰か知っとるからいいなんて言って、続行しようとする。いやいや、ダメでしょ、見られたらまずいでしょ。バレー部の人気者と、ぽっと出の転校生、キスしてたらさすがに刺されるって、私。
そんな心配を他所に、再び重なる唇。さっきと違うのは、角名くんの舌が入ってくる、深いやつってこと。唇が離れる度に、呼吸をしようとするが、上手く息ができない。息ってどうやって吸うっけ。
そうして、角名くんが満足して解放される頃には、足音の主はすぐそこに立っていた。