Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第5章 ★はないちもんめ:角名
こっち来てと言われるままに連れられるが、転校2日目の私には角名くんがどこに行こうとしているのかなんてまるで分からない。ただ、校舎を歩き回り、段々人気の無い方へと来ているのだけは、何となく分かった。
『あの、角名くん...』
「もうちょっと待ってな」
どこに行くのを、何を待てばいいのか。そんな疑問は口に出せず、連れてこられたのは階段の一番上、屋上の扉が見える踊り場だった。
「ここ、俺のサボりの特等席」
『屋上には行かないの?』
「鍵かかってるからな」
それもそうか。友達や恋人と屋上でご飯なんて、割とフィクションだってことは、高校生に入ってすぐに知ったことだ。
そんなことより、なんでここに。
「座って」
促されて、階段に腰かける。隣に座る角名くんの、距離が近い。肩と肩が触れそうなその距離に、鼓動が早くなるのを感じる。
そして同時に、頭の中で冷静さを保つように叫ぶ自分もいる。落ち着け、あと気を抜くな。この人は、初対面の女子に平気でキスをかましてくるような人。
少しの沈黙、破ったのは角名くんで。
「昨日言うたよな、双子に気ぃつけろって」
『あ、うん、でも特段何かあったわけじゃ...』
「何かあってからじゃ遅いやろ、
あいつら、ほんとに見境ないからね」
角名くんが何を知っているのか分からないが、私には2人がそういう、意地の悪いことや自分のバレーの経歴に傷が付くようなことはしないように見える。なんなら、今の角名くんの方がちょっと怖い。
『角名くんが心配してくれてるのは
分かるけど、でもちょっと過保護ちゃう?』
「気になる子には、過保護になるよ」
どういう意味で、それを言っているのか。手元に落としていた視線、えっと驚きの声が漏れ、思わず角名くんへと向ける。
きゅ、と細められた目に、捕まる。
「ええの?またキスされちゃうよ?」
咄嗟に体を引くが、狭い階段。とん、と背中が壁に当たる。角名くん、最初から、これが狙いで。
ぎゅ、と目を瞑る、が思っていた事が起きない。あれ、と思って目を開けた瞬間、角名くんが視界いっぱいに飛び込んできた。