Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第5章 ★はないちもんめ:角名
もしかして、関西風の挨拶だったりするんだろうか。いやでも、そういうのって確か外国の文化だったよね。それとも、角名くんって誰にでもああいうことするタイプの人間なのかな。
結局、なんで角名くんがキスをしてきたのかは、からかわれたんじゃないかってこと以外分からなくて。そんな、初めましてのその日にキスする人の神経なんて意味不明で、考えれば考えるほど埒があかなくて、布団に潜って思考を放棄した。
その結果、角名くんは“危ない人”っていう認識になる訳で。
「片倉さんおはよう」
『お、はよう、ございます...』
朝練で話しかけてきた角名くんから、微妙に距離をとる。怪訝そうな顔をされたけど、さほど気にならなかったのかすぐに双子との自主練習に戻る。
稲荷崎の朝練は、割と自由度が高くて、各々がやりたいことをやるスタイルらしい。とはいえほぼ全員が参加しているので、昨日部活用に下ろしたノートに、監督に頼まれた初仕事、部員名簿用の下書きをしていく。
やりやすいから、2年生からにしよう。宮侑、宮治、角名倫太郎、後はさっき挨拶してくれた銀島くん、小作くん。他にも何人かに声をかけ、埋めていく。そして問題は3年生、北さんしか知らない。
『あの、北さん...』
休憩中なのか、コートサイドで汗を拭く北さんに声をかけ、事情を説明する。ちょっと待ってろ、とその時朝練にいたであろう3年生をずらりと目の前に連れてきてくれた。
「マネが名簿用に名前知りたいらしいから、
ひとりずつ名前とクラス教えたってや」
『お願いします!』
尾白さん、大耳さん、赤木さん、と順に名前を教えてもらい、北さんの協力もあってなんとかその場にいた2,3年生の分は完成する。
そのまま流れで練習終わりの双子と喋っていると、後ろからにょっきり制服に着替えた角名くんが出てくる。なんとなく、気まずくて角名くんから目を逸らしてしまう。
「片倉さん、教室行こや」
『えっ、治くんは......』
「まだ着替えとらんやろ」
ぐいぐいと、半ば強引に角名くんに引き摺られるようにして私は教室へと向かう、はずだった。