Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第5章 ★はないちもんめ:角名
「俺のジャンフロ拾った子ぉや、マネやるん?」
『なんか、そうなっちゃいました』
「ふぅん、ま、よろしく」
よろしく、と差し出された手を取り握手する。目の前に侑くんと治くん、それに角名くんが並ぶとなんというか、圧がすごい。
『みんな背ぇ高いから羨ましい』
「陽菜乃ちゃん言うても平均ぐらいやろ」
「そうやって侑はすぐ可愛い子名前で呼ぶ」
「ええやん別に!
名前で呼ばれた方が嬉しいやんな?」
『私は特に、どっちでも...』
「ほらツム、だる絡みやめぇや」
「片倉さん、こいつらほっといていいよ」
後ろで小競り合いを始める双子を放ったらかし、行こう、と角名くんに背中を押され、体育館を後にした。そのまま一緒に帰る流れになるのかと思いきや、なんと角名くんは寮生らしい。
スカウトされてバレーボールをする為に稲荷崎に来たってことは、もうめちゃめちゃ超すごい選手ってことだよね。私も本当はそうなりたかったんだよなぁと思えば、飄々としている彼が少し羨ましかった。
「じゃあ、俺こっちだから」
学校の敷地内、わざわざ校門まで送ってくれた後、角名くんは校舎の横に建っている寮を指差した。
『ありがとう角名くん、
そうだ、朝練って何時からやってる?』
「寮の奴とか、早い奴は7時ぐらい」
『分かった、それ目掛けて来るようにする』
また明日、と手を振って歩き出そうとして、待ってと手首を引かれる。
「連絡先、あった方が便利じゃない?」
『いいの、角名くん、ありがとう〜』
関西で初めて交換した連絡先、スナと片仮名で表示される名前と、キツネみたいなネコみたいな生き物のアイコン。挨拶代わりにその場でお互いにスタンプを送り合う。
「片倉さん、双子には気ぃつけてな」
『またボール飛んでくるからってこと?』
「ちゃうくて、取って喰われんなよ、ってこと」
食われるって、別に獣じゃあるまいし。意味が分からなくて首を傾げると、ずいと近付く角名くん。
「こういうこと、じゃあまた明日」
ちゅ、と軽いリップ音を立てて離れたそれは、紛れもなく私のファーストキスで。また明日、なんてそんな、軽い言葉で済ませられるような物だったのか、キスって。