Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第5章 ★はないちもんめ:角名
「北さん、俺この子がいいです」
「マネージャー取る言う話か?」
『えっ、ちょ、角名くん!?』
この子がいいですって、そんなペットショップのわんちゃんじゃないんだから。そんなことより、この“キタサン”って言う方は、もしかして。
『えぇと、部長さん、?』
「せや、さっきは侑が悪かった、
綺麗なAパスやったけど、自分経験者なん?」
『はい、中学3年間バレー部でした』
「ほうか...」
ふむ、と考える素振りを見せる“キタサン”。きっともう、私にかける言葉はとっくに決まっているのだろう。迷うことなく口を開く。
「この男所帯が嫌じゃあらへんかったら、
マネージャー頼もうと思てんけど、どやろ」
『むしろあれが決め手で良いんですか...?』
ちら、と振り返ればただの見学か、入部希望か分からないが、十数人の1年生の女子達。その子たちの中には、本気でマネージャーをやりたい子も、いるかもしれないのに。
「分かっとらんかもしれんけど、
君ボール取る時えらい楽しそうな顔しとったで」
『え、そんな顔でした?』
きっとバレーボールが大好きな子なんやろなぁ思て、ここ数年マネージャー不在やったけど、君なら監督もコーチも納得してくれると思うんよ。
俺の目に間違いはない、そんな自信すら伺えるその眼差しに、ただの物見遊山で来たことを悔やんだ。やっぱり私は、まだバレーボールがしたかったんだ。バレーボールの、そばに居たかったんだ。
『私でよければ、是非よろしくお願いします』
「ありがとう、俺は部長の北信介」
『片倉陽菜乃です、
2年生なんですけど、転校してきたばっかりで』
「分かった、詳しい話は監督に聞いてな」
頼んだで、と角名くんの肩を叩くと、“キタサン”改めて北さんは練習へと戻っていく。隣で黙って聞いていた角名くんを見上げると、嬉しそうに目を細める。
「部活も同じなったな」
『そうだね、よろしくね角名くん』
その後、黒須監督に正式にマネージャーとして入部することを伝え、その日は諸々の書類や手続きをして一日が終わった。