Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第5章 ★はないちもんめ:角名
ジャンフロは、オーバーで捕まえろ。
師匠とも言える、中学の先輩からの教え。中学で無回転で軌道読めないジャンフロ打てる人なんてそうそうおらんけど、それでも全国に行けば打ってくる人はおった。
セッター対角、オポジット。それが私のポジションだったから、打つのも、拾うのも、止めるのも、全部頑張った。全部頑張って、頑張りすぎて、膝を壊して、飛べなくなった。
よくある、話だ。
『あぶない...っ!』
それでも、今目の前で強打を体に受けそうになっている下級生たちを、見過ごす理由にはならない。とうに使えなくなった膝だ、今更どうなったって構わない。男バレを見に来たのも、強豪だから気になっただけ。
ボールの着地点より少し前、手で三角を作るように構える。少し震える腕、でもAパスを返す必要は無い。そう分かっていても、久々のボールに心が高鳴る。
トッ、と。
指の腹で捉え、勢いを殺したそのボールは、ほぼAパスの形でネット際へと返る。てん、てん、とボールが体育館を転がる音。静まる、観衆。
『よかっ、たぁ......あ、大丈夫だった?』
後ろを振り返れば、呆気にとられている女の子達。口を半開きにして、何が起きたか分からないと言った表情。それでも、こくこくと頷いているから、当たった訳では無さそうだ。
「おいあんた、大丈夫か」
ずんずんとこちらへ向かってくるのは、さっき挨拶したばかりのクラスメイトの角名くん。
『ごめん、練習中断させて』
「そうやなくて、手ぇ、見して」
キャアと後ろから悲鳴が聞こえ、いきなり両手を握られていることに気付く。さっきのオーバーで怪我してないか見に来てくれたんだろうか。それなら平気なのに。
『なんもないよ、平気』
「侑のサーブに手出すから、びびった...」
『あつむ?』
「あぁ、そこの、金髪ね」
角名くんが顎で示す先、ほんまにごめーんと平謝りをする男の子。よく見れば、同じクラスにそっくりの顔がいたような。
とりあえずこっちに来てと角名くんに手を引かれ、連れてこられたのは角名くんよりも小柄な人の前。3年生だろうか、何やら角名くんが敬語で話している。