Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第5章 ★はないちもんめ:角名
【あの子が欲しい】
Side:角名
なぁサム、マネージャーにあの子欲しい
いやあの子じゃ分からんてどれや
あの、なんて言うん、そうポニーテールの
いやあの子1年じゃないやろ、ジャージ見ろや
ほんまや、2年になって部活入るん珍しなぁ
いや、あの子うちのクラスの転校生やで
「双子、うるさい」
ストレッチをしながら、体育館の入口からぞろぞろと入ってくる新1年生の群れを眺める。“男子”バレー部の見学のくせに、半分ぐらいはアホみたいな女ばっかり。
「角名かて気になるやろ、マネージャー!」
「珍しく今年は希望者多いから多少は」
嘘。多少どころじゃない。
つい数時間前、親の都合で高校2年生での転校を余儀なくされたらしいその子は、俺のクラスにやってきた。全国を回っているから、色んな方言が混ざった、不思議な話し方をする子だった。
『ねぇねぇ、読み方なんていうの?』
担任に俺の後ろの席を案内されたらしい転校生は、俺のノートに書かれた名前を差して問う。
運良く席順が自由で、窓際のケツから2番目の列に治と横並びで座ったら、たまたま一番後ろが空いた。そこに座ったのが、転校生だった。
「あぁ、スナリンタロウって読む」
『スナくん、ね、関西訛りじゃないんだね』
「出身、愛知だから」
『そうなんだ、1年間仲良うしてな』
挨拶を交わす俺とその転校生、片倉陽菜乃に、治はさほど興味も無いようで、ドーモと頭を下げるだけだった。
そんな会話を交わした記憶も新しい転校生が、新品のジャージに身を包んだ1年生に紛れて、きょろきょろと部活見学をしているのだ。気にもなるだろう、普通。
下ろされていた髪は高い位置にくくられ、首を動かす度にさらりと毛先が踊る。真剣に見ている姿に、何故か惹かれた。
今のメニューはサーブ練習、侑がいいとこ見せたろと踏み切る。強打か、ジャンフロか。侑が選んだのは後者で、それでもかなりの威力を持ったボールが、体育館後方1年生の群れに向かって飛ぶ。
「おいその辺どけろ!」
キャアと悲鳴を上げる1年生。そのボールの着地点に向かって、スッと影が横切る。
『あぶない...っ!』
それなりの威力を持った侑のジャンフロを拾ったのは、紛れもなくあの転校生だった。