Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第1章 ★Vê você:日向
何やらブチブチと言っていたが、結局日向くんも飲んでいる。筋張った手が握るグラスの中でシュワシュワと炭酸の弾ける、淡い紫色、確かグレープ味だった。
日向くんは初めてでは無いと言え、所詮2人とも飲酒初心者である。しかもここは南の異国、日本とは違いそもそもカクテルに使われている酒が強いのだ、ものの1~2杯で酔った。2人とも。
『よった!』
「おれも!」
そしてこのザマである。エイトールのポケットにカラフルな紙幣を何枚かつっこみ、眠りこけている男3人を放置。賑やかな通りへと2人で駆け出した。
『ねえ、しょーよーの家どっち?』
「どこだろ、あっちかも!」
翔陽の指さす先は、この辺りで比較的有名な観光地の山。あの山に住んでんの?と訊ねると、まさかと笑う。その手前にシェアハウスしているアパートがあるとかないとか。
アルコールで火照った頬が、吹き抜ける海風でほんのり冷やされる。ふと、隣を歩く翔陽の腕に目がいく。擦り傷が指先から肩までたくさんあって、カサブタや傷の跡になったものがほとんどだが、中にはまだ生々しいものもある。
『これ、痛そうだね』
ひときわ大きな傷を見ながら問うと、まぁね、と。
「砂の上って熱いから、
軽くヤケドみたいになっちゃうんだよなー」
これも努力の勲章だけどな!と豪快に笑い飛ばす翔陽は、本当に努力を重ねて、結果を求めてきた人しかできない顔をしていた。
そうして、途中で寄ったお店で瓶のお酒を追加で買って、飲みながらそれぞれが経験したブラジルでの出来事を語り合った。全財産が入ったカバンを盗られた(無事検挙されてなんとかなった)とか、バイト先にタトゥーバチバチのスゴイ人がいるとか、初めて食べたハンバーガーがでかすぎたとか、そんな話。
透き通った緑色の瓶が残り僅かになった頃、翔陽が立ち止まる。