Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第4章 失恋はプロローグ:菅原
順番にお風呂を済ませ、菅原にはしまい込んであったお父さんのスウェットを貸した。お父さんのこととか聞いてくるかなと思ったけど、ありがとうと言ったきりで、そういうところが助かるなと思った。
部室に予備があるからと遠慮する菅原からシャツを剥ぎ取り、自分の洗濯と一緒に菅原の脱いだのをぽいぽい洗濯機にぶち込む。寝る前に干せば、朝には乾いているだろう。
ちなみに、私はいつものパジャマを着るのはさすがに恥ずかしかったので、中学のジャージを引っ張り出し、部屋着にしてるんだと誤魔化した。さすがに、うさぎちゃんのもこもこパジャマは、ね。
「なんか、逆に至れり尽くせりですまんな」
『うぅんこっちこそ』
そう言いながら澤村に教えてもらった──私とサボったせいで菅原も存在を知らなかった──数学の課題に取り組む。
一応進学クラスということもあって、毎日多少の課題は出るし、毎週決まった曜日に英語の小テストやら国語の慣用句テストがある。これだから自称進学校もどきは困る。
カリカリとシャーペンの音、カチコチと刻むアナログ時計の秒針。いつの間に降り出したのか、窓の外からは雨が叩く音が鈍く聞こえる。そんな不規則なBGMが、泣き疲れた体を眠りへと誘う。
「ほい、世都、眠いなら寝よ?」
『英単語、まだ半分だよぉぉぉ』
「世都なら覚え早いから朝でもいけるべ」
だーいじょぶだって、と肩を叩く菅原は、一体どこからその自信が湧いてくるのか。ついには菅原の寝て全部忘れちゃおうという言葉に負けて、参考書を閉じる。
『私はソファで寝るから、菅原ベッドね』
「いやいやいやいや、逆だろ!
世都の匂いに包まれながら寝れないって!」
『……菅原も、男子だね』
「当たり前だろ俺の事なんだと思ってんだ!」
今日何度目かの焦り散らかす菅原に、少しだけ笑ってしまい、何笑ってんだよと頭を小突かれる。追い討ちをかけるように、一緒に寝る、と首を傾げれば、ソファの上のクッションが飛んできた。
誰かがいると、夜って楽しいんだな、なんて。菅原のおかげで思い出して、ちょっとだけ切なくなって、でも顔に出ていないことを祈りながら、クッションを投げ合った。