Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第4章 失恋はプロローグ:菅原
その日はたまたま部活が休みだったらしく、失恋祝いと新しい恋に祝杯をあげよう、と菅原に誘われたので、2人で帰ることに。
『でもよかったの、貴重な休みなのに』
「いーのいーの、
どうせあいつらといるハメになるし」
ずっと野郎の顔拝んでたらスガさんさすがに不能になりそう、なんて冗談を言いながら、のんびりとした天気の中坂道を下る。
あそこ寄り道しよう、と指を差した先にはバレー部御用達らしい、坂ノ下商店。こんにちはと店内に入れば、ド派手もド派手、ど金髪なお兄さんがタバコ片手に迎え入れる。
『わ、肉まんあるんだ』
「まだ寒いもんなぁ、食うか!」
ここは俺が出すから、と言って譲らない菅原にご馳走になった代わりに、近くの公園の自販機で私は飲み物を買った。
今朝にも菅原にココアをご馳走になっているから、3本ぐらい買いたい気持ちだったけど、さすがに踏みとどまる。
『ふわぁ、めっひゃおいひぃ!』
「だべ〜?」
これいっつも大地たちと食って帰ってんだよな、と肉まんを頬張る菅原。おっと、思ったより一口がでっかいらしい。ものの3口ほどで完食すると、アツアツの肉まんと格闘する私をにっこりと眺める。
『ん、なんか、食べにくいんですけど』
「世都は食べてるところもめんこいなぁ」
『やだ!恥ずかしい!見ないで!』
ぐりん、と菅原に背を向けるようにしてベンチの端に座り直すと、じゃあスガさんはこっちと言いながら隣のベンチに座り直すから、ちょうど向かい合うようになる。
自身の膝に肘を立て、頬杖をしながらにまにまと笑うそれは、まるでペットの猫にチュールをあげているみたいな。
「さぁさぁどうぞお食べ下さいな?」
『菅原って、実は意地悪だね』
「可愛い子には意地悪したくなる、ってな〜」
少し拗ねながら言えば、そんな返しが飛んでくる。よくまぁそんな歯の浮くようなセリフを言えるもんだ。まぁ、それが菅原らしいところでもあるんだけどさ。
『じゃあカッコイイお兄さんには、
特別に最後の一口をあげようと思います』
私にとっての二口を、半分にちぎり、大きい方の欠片をはいどーぞと菅原の口に押し込む。
美味しい、と聞けば、はにかんだ菅原は、今まで食べた肉まんでいちばん美味い、なんて言って。