Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第3章 ☆YOU ARE MINE.:京谷賢太郎
一緒に帰路を辿るのはいいとして、体育館ではあんなに饒舌だった京谷が、急に静かだ。
『なに、今更になってちょっと恥ずかしい?』
「っう、るせェ」
なんだ、図星か。さっきまでは先輩たち相手にあんなに威勢良かったのに、ウブな所があるもんだ。というか、普段が言葉足らず過ぎるんだよな、この人。
『ねぇ京谷、私はね、恥ずかしかったけど、
あんな風に言ってくれて嬉しいって思ったよ』
そりゃもちろんみんなの前であんな、ね、ハグとか、されたら、ちょっと羞恥心がすごかったけどさ。でも、京谷はちゃんと私の事好きなんだって、誰にも渡したくないって思ってくれてるんだって、分かったから。
『だから、ありがとうね』
半歩先を行く、京谷は振り返らない。それでも、聞いて欲しかった。今私の持ってる、とびっきりのありがとうを、伝えたくて。
「陽菜乃は、」
『っ、京谷、な、名前!』
「危なっかしいところがある、
あと誰に対しても距離が近ェ、矢巾とか
及川さんも、花巻さんも、あんま嬉しくねェ」
ぽつ、ぽつと少しずつ話してくれる京谷。
自分なんかと付き合ってていいのか、そもそもなんで自分だったのか。岩泉さんの方が大事に、優しくしてくれるんじゃないか。そんな葛藤。
ぱた、と京谷の足が止まる。
「それでもお前は、
陽菜乃は、俺の彼女だろ」
『きょう、たに...』
私が、猛アタックをして、バレンタインで何回目かの告白をして、やっと付き合ってもうすぐ7ヶ月。初めてこんなにも好きって気持ちをぶつけてくれた。いつも“おい”とか“お前”とか、良くても苗字だったのに。初めて、名前を呼んでくれた。
嬉しくなって、ついそのまま抱き着く。背中に手を回せば、同じように包み込んでくれる、私の大好きな匂い。
『賢太郎、だいすき』
「っば、おま...」
『すっごくすっごく、すーっごくすき』
他に目移りなんてしない、できない、したくない。
だって私が、京谷賢太郎が大好きだから。
私より高い位置にある唇に、背伸びをして自分のを重ねる。この瞬間が、ずっと続けばいいのに、なんて。月並みなことを、思ったりして。