Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第3章 ☆YOU ARE MINE.:京谷賢太郎
「きょ、狂犬ちゃんが...」
「岩泉に噛み付いた...」
「オイオイまじかよ明日槍でも降るんじゃね!?」
信じられない、と言ったトーンで言葉を交わす3年生。もちろん、私だって信じられない。だって、言うこと聞かない京谷が唯一まともに指示受けできるの岩泉さんだけだし。
そもそも京谷が腕相撲とかマラソンとか色々吹っ掛けて、全部岩泉さんが勝ったからなんだけど。部活に来てなくても廊下ですれ違った岩泉さんに頭下げてるのも知ってたし、それを見た時はオオカミの縦社会ってまさにこれだなとか思ったけど。
あの、京谷が、岩泉さんに反論するなんて。
『京谷...』
岩泉さんは俺より強いから楯突かない、みたいな、自分の中のルールを破ってまで嫌だったの。それってただ、私の事好きで、他の奴に触って欲しくないって。
そんなの可愛すぎる嫉妬じゃないか。
そう考えると今日一日の京谷の行動に納得がいって、むしろそれ以外に考えられなくなって、ぼぼぼと顔に熱が集中する。
「よし、取れたぞ、
時間かかってごめんな、片倉」
『本当にありがとうございます』
岩泉さんが絡まった髪の毛を丁寧に外ししてくれたお陰で、パッと見も切れてないし、触ってみても痛くない。やっとの事で岩泉さんを見上げると、表情に特に変化は無いが、少しだけ耳が赤い気がした。
「おい、こっち」
『えっ、わ、きゃ!』
そして、身動きが取れるようになった私を、すかさず後ろから京谷が肩を両手でぐっと引いて、そのまま後ろ向きに倒れ込むように京谷にぶつかる。
肩に置いた手をそのままするりと前へ動かされれば、捕獲完了、今度は別の意味で動けなくなる。ていうか、めっちゃ恥ずかしいんですけどこれ。
『きょ、京谷、これ、えと、は、恥ずかし...』
ガッチリホールドされていて、後ろを向けないから、ただ俯くしかない。体育館のみんなから向けられる視線が、まぁ刺さる刺さる。
部活中はすっかり大人しかった矢巾も、リア充爆発しろという怨念を込めた視線をガッツガツに送ってくる。
「こいつは、俺のもんです
だから3年生とか関係ないっス」
ただ真っ直ぐなその言葉が、嬉しくて、こそばゆくて。真っ赤になりながら俯くことしかできなかった。