Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第3章 ☆YOU ARE MINE.:京谷賢太郎
周囲に感じる人の気配、でも髪が絡まって身動きが取れないから、必然的に岩泉さんに体を寄せたままになってしまう。うぅ、穴があったら入りたいとはこのことだ、猛烈に恥ずかしい。
「俺も陽菜乃ちゃんハグしたかったぁ!」
「及川黙ってろ、取れそうなんだよ」
「岩泉じゃなくて俺に飛び込めば良かったのに、
ま、俺が絡ませるのは手と足だけど、な」
『まっ、まままつ、松川さんっ!』
「変態おやじどもは帰ってくださーい」
「ちょっとマッキー、俺を巻き込まないでよね」
頭上でテンポよく交わされる会話も、状況が状況なだけにいつもの様に受け流せる余裕が無い。みんなどんな顔してこれ見てるんだろう、ていうか京谷に見られてたらどうしよう。
い京谷カムバック作戦を考えると、見られるべきなのだろうか。でももう部活普通にやってたし、やらなくていいんじゃないかな。
「ごめんな片倉、あともーちょい」
『わ、私は全然、あのむしろ本当にすみません』
「色ボケのとこにぶっ飛んでくより、
俺で案外正解だったかもしんねぇな」
『岩泉さん...!』
上から降ってくる声も、言葉も優しくて、思わずぐらりと心が傾く。なんて、男らしいんだろう。男の中の男、いや漢。これはもう私が男の子でも好きになっちゃう。
あともうちょい、と岩泉さんが言ったところで、体育館に響き渡る怒号。トイレから戻ってきた、京谷である。
「何やッてんだよ!」
『わ、京谷っ、いてててて』
「馬鹿お前、動くな髪切れるだろ」
『っ、でも』
咄嗟に振り向こうとして、ピンと張った髪が悲鳴を上げる。すぐ後ろに走って来た荒い息は、きっと京谷だ。
『ごめん、転んで支えてもらったら、
ジャージに髪の毛挟まっちゃったみたいで』
「そんなん切ればいいだろ」
「おい京谷、仮にも彼女に向かって、
それは有り得ないセリフだと俺は思うぞ」
「っ、ウス、すんません......」
岩泉さんの低い声に、途端に大人しくなる京谷。
「でも、いくら岩泉さんでも、
片倉とくっ付いてんのは嫌っス」
青天の霹靂とはまさにこれの事か。京谷の口から出ると思わなかった言葉に、全員があんぐりと口を開け──ていると思う、見えないけど──た。