Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第3章 ☆YOU ARE MINE.:京谷賢太郎
及川さんがサーブを打つ度に、動画を確認し、フォームや踏切のタイミング、位置、更にはサーブトスの高さや軌道まで細かくチェックしている。
ちなみに及川さんがサーブを打つ度に、渡を筆頭にみんなレシーブに入ろうとするが、まぁ威力が鬼。殺人兵器すぎて、金田一なんかは当たりどころを間違えたのか、腕を痛めていた。
『そろそろ納得いくの来ました?』
「ん〜、波に乗れるといいんだけど、
そこまでにちょっとかかりすぎなんだよね」
現に今だって10本打ってからじゃないといいやつ来ないし、と言いながら、手に持ったボールをくるくると回転させている。そしてそこへ及川がやるなら俺も、とどやどやと3年生が押しかける。
岩泉さんにもアイポン──及川さんと同じ機種で色違いだった──を手渡され、再び操作に迷いながらサーブの動画を撮る。
同じようにフォームやら何やらを確認するが、岩泉さんの方は割と早くにしっくり来るのが打てたらしい。
「片倉サンキュ、俺はもういいぞ」
『さすが、コツ掴むまで早いですね』
「いや、今日はこの辺でって感じだな、
俺と及川のサーブで崩せたらかなり使えるし」
ギリギリまでサーブは磨くつもりだ、と言う。コートを見るその目には、もう6年来の相棒の姿。いつも隣にいる、当たり前に存在するその“信頼”は、ふたりがこれまでに培ってきたかけがえのないもの。
『いいなぁ、及川さん』
「あ?」
『岩泉さんから全幅の信頼を寄せられてて』
もちろん、私が信頼されていないと感じている訳では無い。及川さんと岩泉さんだけで決め兼ねる事も相談してくれるし、頼ってくれてるんだなって分かるから。
そういうんじゃなくて、なんていうか、文字通りの阿吽の呼吸。自分の足りないところを補完してくれる、パズルのピースとか、デコとボコがぴったり合う感じ。
『男女だとまた少し違うかもしれないですけど、
私は京谷とその領域には達していないので』
「領域って...
お前らコンビで修行してんのかよ」
『んんんんん、そうじゃないですっ!』
日本語って難しい、そう喚けば、そうかよと顔をくしゃっとさせてと笑う岩泉さんがいた。