Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第3章 ☆YOU ARE MINE.:京谷賢太郎
うちのバレー部の強みと言えば、豊富な選手層。1年生から3年生まで、ミドルもスパイカーもみんなが粒揃いである。だからこそ、試合形式の練習がやりやすい、はず、なんだけど。
「ちょっと狂犬ちゃん!
今のまっつんのボールなんだけど!」
「チィッ!」
「松川、大丈夫か」
「おん、だいじょぶだいじょぶ」
まぁ、なんとも、噛み合わない。というか、京谷が合わせようとしていないが正しいのだろうか。まるで、上がったトスを全て打ってやると言わんばかりの助走と踏切。
及川さんだって、オープンであれば名前も呼ぶし、クイックやブロードもサインを出しているから分かるはず。そんな存在をこれでもかと主張する京谷に、負けじとボールを呼ぶ3年生に、いつもより白熱した練習となる。
結局今日のチーム戦はレギュラーチームが勝ったが、ベンチチームにとってもすごくいい刺激になったみたい。監督の集合の後、体育館が閉まるギリギリまで練習をするんだとみんな意気込んでいる。
片付けをしながら今日の練習をまとめていると、ねぇねぇと声を掛けられる。
『及川さん』
「ちょっと俺の事撮ってくれない?」
サーブのフォーム見直したいんだよね、と言いながら最新機種のスマホを手渡してくる。ただ、私の持っているやつとは全く違うので、使い勝手が分からない。
『ごめんなさい、私オンボロイドで、
ちょ、アイポン分かんないんですけど...』
これどこがカメラアプリですか、あれ、なんか違うとこになっちゃった、ギャラリーから戻れないんですけど。
慣れないスマホに悪戦苦闘していると、くつくつと及川さんに笑われる。むっとしながら睨めば、可愛い可愛いと誤魔化される。
「ここを長押ししながらスワイプ、
で左下から撮った動画とか見れるから」
『最初っからそう教えてください!』
「え〜、だって陽菜乃ちゃんが困ってるの
可愛いから意地悪したくなっちゃうんだもん」
うへぺろ、と舌を出してウィンクする先輩にイラッとしつつ、早くサーブ打ってくださいとドッジボールのようにボールを投げ付ける。
そうして、サーブ位置に着いた及川さんを、スマホ越しに眺める。それすらも京谷の嫉妬に薪を焚べていると知らないまま。