Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第3章 ☆YOU ARE MINE.:京谷賢太郎
1年以上ぶりになる部活参加とは思えないほど、京谷は以前と変わらずに動けていた。しなやかな柔軟性も、力強いインナースパイクも、前と変わらないどころか、より鍛えられているとすら思える。
私だって、京谷のバレーを見たのは大した回数はない、プレーをしっかり見る前にいなくなってしまったから。それでも、この人の周囲を巻き込んでしまう、荒々しいけれども力強い、台風のようなプレースタイルは嫌いでは無い。
まだ少し息は合わないけれど、基礎的なパス練習にも真剣に取り組む京谷を見て、そう思った。
「あーあ、花巻さん妬けちゃうなー」
『なんでですか?』
練習の合間、5分間の小休止。用意したボトルのドリンクを飲みながら花巻さんがすすすと近付いて言う。ヂューっと喉にスポドリを流し込み、ニヤリと笑う。
「だって、陽菜乃ちゃんが俺のこと
見てくれる時間が減っちゃうでしょ?」
『何言ってるんですか、
レギュラーもベンチもそうじゃなくても、
私は部員全員のこと見てる、つもりです』
ほら見てください、と手元のノートを見せる。どんどんページが増えるからと、学年ごとにルーズリーフにまとめることにしたそれ。毎日書いているマネージャーの部誌とは別に、個人の調子や特に力を入れている練習内容なんかをメモしたもの。
何それ貸して、と言うので3年生の分を渡す。関わった時間が長い上、主力メンバーも多いので、3年生の記録は他の学年よりも少し分厚い。自分のところだけでなく、及川さんや岩泉さんのページも見て、花巻さんはすげぇなと感心したように言う。
「陽菜乃ちゃんこんなのも作ってたの」
『まぁ、限りなく趣味ですが』
誰かが何かに打ち込んでいるのを見ているのは、こっちもすごく元気をもらえるので。
そう笑えば、花巻さんはフハッと吹き出した。
「陽菜乃ちゃんには適わねぇな」
『何がですか?』
「ま、アリガトってこと」
今度シュークリーム買ってあげる、と言いながら、ポンポンと頭の上に手が乗る。みんな、私の頭は物置だと思ってんのかな。
電子タイマーが鳴り、練習の再開を告げる中、そんなことを思いながら練習に戻る花巻さんの背を見送った。