Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第3章 ☆YOU ARE MINE.:京谷賢太郎
そのまま大股で進む京谷に、私は小走りでやっとついていく。こういう時、男女の体格差をいやってほど感じる。そして部活の時にあんまりそう思わないのは、みんなが私に合わせてくれているからだと、今更思った。
『ちょっ、と、京谷、痛いし速いってば』
「ッ、悪ィ」
少しだけ緩む掴まれた腕にかかる圧と、歩く速度。階段を駆け下り廊下を走って、引かれるままに連れてこられたのは部室棟。の、裏。
9月になったとはいえ夏はまだ盛り、やや熱こもった空気と入道雲が覆う空。最近曇りがちだけど、今日は晴れてる方だし、園芸部だろうか、手入れされた花壇にはパンジーやら背丈の低い向日葵が愛らしく咲いている。
『もう、何もこんなところまで
引っ張ってくること無かったんじゃない』
「人がいねぇのに越したことないだろ」
『それ犯罪する人のセリフだよ』
ただでさえ悪人ヅラなんだから、と眉間に寄ったしわをちょんとつつけば、ますます不機嫌そうな顔になる。そのまま私の右手も捕まえると、部室棟の壁際まで進むように促された。
トン、と背中にあたる、固くて冷たいコンクリート。
『京谷、?』
「お前は、俺のだろ」
壁際に追いやられ、両手も捕まって使えなくされ、詰め寄られる様は、まるで肉食獣に襲われている小動物のようだと思う。
不機嫌で、怖い顔なのには変わりない。ただ、さっきと違うのは、その口調に少しのやきもちが混ざっているんじゃないかなっていうこと。
ほんの少しの嫉妬と、不安と、入り交じったような顔をしている目の前のオオカミ。私じゃなくて、バレーに必死になって欲しいのにな、なんて思って、ふっと小さく笑う。
「何がおかしいんだよ」
『うぅん、何も』
「変なやつ」
『私もそう思う』
ほんとに、こんな京谷と付き合ってるなんて。
こんな不器用で、お世辞にもイケメンとは言えないというか、怖い顔の人。でも本当はすごく真面目で、たくさん考えてて、それが上手くいかなくてもバレーは辞められなくて。
トゲまみれだけど、その棘の中にはびっくりするぐらい綺麗な花が咲いている。そんな心を持った、ひと。