Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第3章 ☆YOU ARE MINE.:京谷賢太郎
さっきまでの笑い声はどこへやら。シン、と一気に静まり返り、京谷の舌打ちが、やけに大きく聞こえる。
『なんか、学校で会うの久し振りだね』
「何やってんのお前」
『え、み、ミーティング、だけど...』
さすがに“君を部活に連れ戻すための”とは言えないけど。まぁ、ミーティングはミーティングだから間違いないでしょ。
教室に入りドアを閉めると、ずんずんと近付いてくる京谷。いつも通りだが、コワモテというか常に何かを睨みつけているようなその表情は何一つ変わらない。
拳を作ってぐりぐりしていた及川さんの片手首を京谷は掴み、吐き捨てるように言う。
「手ェ、離してもらえますか」
「えぇ、どうしよっかなぁ」
そう言いながら掴まれていないもう片方の手を頭の上に置き直し、さらに顎を載せる及川さん。さすがやることが違う、これはもう、まんまチャラ男のそれだ。
私の頭の上、静かにバチバチと火花が飛ぶ。さすがに気まずい。ちらりと視線を向けると、及川さん除く3年生3人は見世物でも見ているような面白がってる顔、そんで1,2年はちょっとビビってたり、京谷が嫌いな矢巾は睨みつけてるけど。
助けて、の意味を込めて岩泉さんに目をやる。すぐに気付くが、口パクで返されたのは“さ・く・せ・ん”の4文字。そうですね、こういうことしようって言ったの私で、今まさに実践してるだけですね、はい。
墓穴。
『まぁまぁ、京谷、何もないから』
「ハァ?あるだろ、
お前何俺以外のやつに触らせてんの」
「おぉ、京谷にも独占欲あったんだ」
「いいねぇ、おアツいねぇ」
「アァン!?」
花巻さんと松川さんがわざと煽るようなことを言えば、分かりやすく挑発に乗る京谷。こうも扱いやすくていいのだろうか、今のところ想定した通りの反応をしてくれている。
と、空いている片手が私の左手を掴む。
『へ?』
「へ、じゃねぇ、間抜けな声出すな」
行くぞと腕を引かれ、一歩踏み出せば、頭に乗ってた及川さんの重みが消える。ずんずん自分の歩幅で進む京谷。ドアを乱雑に開け、連れ出されるのだとやっと自覚する。
教室を振り返れば、手を振る部員たち。
『ちょ、っま、待ってええぇぇぇぇええ!?』
もしかして。
一番被害を受けるの、私なのでは。