Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第3章 ☆YOU ARE MINE.:京谷賢太郎
『で、そういう訳なんだけど、
矢巾だったらどうやって説得する?』
「いや俺に聞くなよ」
『そこをなんとか〜!』
「いいから前向け、ほらセンセー来たぞ」
ぶーと不貞腐れれば、うるさいとばかりに椅子の足を蹴られる。仕方なく前を向けば、担任の朝のホームルームが始まった。
ちら、と後ろの席を伺えば、不機嫌そうな顔。そう、何も隠していないが、何を隠そう同じクラスで同じ部活、矢巾秀である。
ちなみに矢巾がここまで乗り気でないのにはきちんとした理由がある。高校1年生の頃、矢巾は“とりあえず可愛い子なら誰でも彼でも引っ掛けようとする”という噂があって、まぁ顔はいいから引っかかる子もしばしば。
かくいう私も引っ掛けるべくルアーを投げ入れられ、同じ部活って言うこともあってある程度仲良くなった。問題はその先。矢巾のアタックをガン無視して、私が好きになったのは他ならない京谷賢太郎、その人である。
先輩大尊敬矢巾くんからすれば、京谷賢太郎は目の上のたんこぶとでも言おうか、とにかく存在が不愉快。なので、私が京谷の話をすると、ことごとく嫌がるのである。
閑話休題。
『ね、矢巾にしか頼めないの、お願い』
ホームルームが終わって直後、改めて後ろの席を振り返って手を合わせる。どうせ矢巾は私のお願いを断れるはずもない。
「頼むったって、何すんだよ...」
『作戦会議とかしようよ、
あとちょっかいかけて欲しい』
「ハァ?猪八戒?」
『いやそれ孫悟空の猪な』
変な冗談はいいから、と仕切り直す。
『矢巾とか、まぁ及川さんとか、
その辺にちょっかい掛けられてる〜って
ことにしたら部活来てくれないかなって』
「文字通り身を切る作戦すぎる」
『後で痛い目見るのそっちだし、
京谷は部活に戻ってきてくれるし、
一石二鳥だと思いませんか?』
「俺と及川さんが死ぬのはいいんだなお前」
捨石だよとウィンクすれば、本気で嫌そうな顔をされた。まぁそれは多分冗談として。続きはお昼休みに部室で話そうということで、さっそく部活のグループに招集の連絡を入れ、1限目の数学に集中しようとした。